ボジョレーヌーヴォー2024を和牛ステーキに合わせる
2024年は生産者の技量を試されるヴィンテージ
温暖化の域を超えて、猛威を振るい始めた天候をもはや異常とは呼べなくなった2024年。遅霜、春から初夏の低温と長雨、その反動か熱く乾いた8月。造り手によって大きな差が出てくる、生産者の経験値と技量が試される厳しいヴィンテージで、本当にドキドキしながら解禁日を迎えた。
まずはそのまま飲んでみた
シュブランさんのボジョレーヌーヴォー2024年を抜栓、グラスに注ぐ。色は透明感があるルビーレッドで極めて淡く一抹の不安がよぎったが、口に含んだ瞬間驚きに変わった。
美味い!
香りはイチゴよりもはるかに強く、フランボワーズのようでしっかり輪郭がわかる。舌触りはとても滑らかで、それでいてボリュームのある果実味が溢れてくる。酸はしっかりとキレるが突出してこない。
只モノではない!アペリティフでもいけるし、これならステーキでも負けない。
和牛ヒレ肉のステーキにボジョレーヌーヴォー
近所のスーパーステーキ肉を買う。高級店ではないが、近頃は円安不況のせいか、輸入牛肉だけでなく、黒毛和牛のヒレ肉(シャトーブリアン)まで並ぶようになったのは助かる。
肉は冷蔵庫には入れずに、しっかりと常温に戻しておく。そうしないと焼いた時に表面ばかり焦げても中に火が通らない。そして脂の多い和牛のステーキを美味しく焼くには、フライパンを過熱させずに、低めの温度でゆっくりと火を通す。
焼く直前に本当に軽く塩と黒コショウを振り、そのまま弱火のフライパンに載せて、ほんのわずかの塩とコショウを振り、蓋をして2~3分間待つ。蓋を開けて様子を窺い、肉をひっくり返して2~3分焼いて火を止め、そのまま放置しておくと、ゆっくりと肉の中心まで熱が通る。
塩コショウで焼いただけのステーキでも美味しいが、今年のボジョレーヌーヴォーはバランス点が高いので、お手軽なソースでいいから添えていただきたい。
ボジョレーに合うお手軽なステーキソース
僕のソースは簡単であっという間に作れる。
肉を取り出したフライパンにグラス半分のボジョレーを入れて脂分をこそげて弱火で煮詰め、みりん、濃い口しょうゆとバルサミコ酢を少々加えてもう少し詰め、最後に大粒マスタードを足して火を止めるだけ。5分はかからない。大粒マスタードは辛くないし見た目もいいのでソース作りに重宝だ。酸の強めな調味料を使うため、和牛の脂やボジョレーとの相性はよい。
ヒレステーキは口中で何の違和感もなくボジョレーヌーヴォーと溶け込み、高揚していき、杯は進む。気が付くとあっという間にボトルが空いてしまったのには驚いた。
すき焼きなどのコッテリした味付や、強すぎるニンニク系には向かないが、和食全般から白い肉の洋食まで、楽々とペアリングできるワインなので、広く合わせてお楽しみいただきたい。
シュブラン家を継いで7年のフロランスさんとジェフロワさんが、こんな難しい年にここまでの仕上がりを見せてくれるとは。素晴らしい技量を実証してくれた二人に敬意を表したい。
本当に気を揉んだ今年の天候だったが、シュブラン家のボジョレーヌーヴォー2024年を胸を張っておすすめできることは、唯々感謝しかない。
田村安
マヴィ代表
著書の「オーガニックワインの本」(春秋社刊)でグルマン・クックブック・アワード
日本書部門2004年ベストワインブック賞を受賞
フランス政府より農事功労章シュヴァリエ勲章受勲
ボルドーワイン騎士Connétablie de Guyenne
2023年と2024年の違いを較べると、まるで違うのわかる。ヴィンテージ年の差と熟成の差の合わせ技だ。