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ワインと料理

MON テンプラニーリョ|新着のスペイン 赤ワインを試す

ワインと料理

スペインの代表品種:テンプラニーリョ

Rioja(リオハ)を代表する品種テンプラニーリョは、僕にとって思い入れの強い品種だ。

スペイン留学中の1980年7月、ヒッチハイクで北スペインを旅していた時、バスク地方Pamplona(パンプロナ)でサン フェルミンの牛追い祭りを見た帰りに、北リオハのHaro(アロ)に立ち寄った。というか、たまたま拾ってくれた車がHaroまで乗せて行ってくれた。

ドライバーの男性と街のバルで飲んでいた時、僕を心配して声を掛けてくれたある家族が、その晩は泊めてくれることになり、翌日アロ市を代表するボデーガ(ワイン醸造所)のヴィニャ・トンドーニャ社に連れて行ってくれた。銘醸ワインとして有名な高級メーカーだ。そこで初めてワインの醸造過程を知ることになり、その後の僕の人生の布石が打たれたともいえる。

醸造所で教えてくれたのは、ワイン醸造には水は使わず、ぶどう果汁がそのまま発酵してワインになること。リオハではテンプラニーリョが最も重要な品種であるが、需要が多くて足りないため、ラマンチャ地方など内陸の高原地帯にある産地からバルクワインを購入してリオハ産と混ぜて使っていること。さらに醸造の際には糖分を足す工程があることも。

スペインがEUに加盟した1985年よりも前の話であり、今はどうかはわからない。ただリオハワインの名声はさらに上がっており、スペインだけでなく世界中に輸出もされており、需要が爆発的に増えたのは間違いない。

モン は全量 ヴィエイユ・ヴィーニュ

モン(MON)が造られるモンテサンコは、バレンシアの名士・コティーノ家にとってVIP向けのワインを造るための、とっておきの農場だ。

モンテサンコの畑は、バレンシア州内陸部の標高800m近い高原にあり、強い陽光が降り注ぎ、よく乾燥する。スペインを代表する銘醸地のリオハ地方とも通ずる気候条件で、テンプラニーリョにも好適だが、より暑く乾燥しているのでもっと糖度が高まり果実味が増す。

土地の条件がいいだけではなく、植えられているぶどうはフランス式に言うと全てV.V.「ヴィエイユ・ヴィーニュ」(古木)ばかり、中には100年以上というものもあり、まさに「類稀(たぐいまれな)」という言葉通りの農場なのだ。

一般的に樹齢25~30年も経つとV.V.とされるらしい。マヴィの生産者では、だいたい樹齢45~50年以上経ってから使っている。ただ【MON(モン)】は全量がV.V.に相当するから、あえてそう名乗らない。

この土地の陽光と乾燥が生み出す糖と果実味は、酸味を丁寧に包み隠してくれる。そして樹齢の高いぶどうの樹は乾燥した大地に深く広く根を張り、いろいろな地層のミネラルを吸い上げて複雑な要素をもたらしてくれる。樹齢を重ねたことと強い乾燥で果皮はより厚くなり、多くのタンニンを含み、ワインの骨格はしっかりする。

モンテサンコのテンプラニーリョ

モン テンプラニーリョに使われるぶどうの樹はモンテサンコでは比較的若く、樹齢60年を超える程度。もちろん他所では十分V.V.だ。老木のため収穫量は極めて少ない。

糖、果実味、酸味、タンニン、香りはぎっしりと詰まっている。ただバランスが秀逸で一切の突出を許していない。真のVIP向けワインである。一般に出回るリオハのテンプラニーリョのようにアタックを前面に出すことなく、ただただ上品な深みに感服する。

モン テンプラニーリョとモッツアレラチーズピザ

無理を承知で実験をやってみた。この銘酒にピザを合わせるなどと。

やはりワインが勝ち過ぎた。追加でベーコンを載せてみたがモッツアレラチーズではテンプラニーリョと勝負にならない。

モン テンプラニーリョと生ハム・チョリソー・ドライトマトピザ

次にテンプラニーリョとは相性のいい生ハムやチョリソー(ドライソーセージ)と、コクのあるドライトマトを足してみた。

今度はだいぶマシだ。ただベースのモッツアレラチーズピザがどうしても軽い。もう少しコクのあるチーズだともっと良いだろう。

モン テンプラニーリョとレンテッハ(レンズ豆)

翌日は手軽にできるスペイン料理にしてみた。レンズ豆(スペイン語はレンテッハ)の煮込みだ。地中海諸国ではどこでもある、本当にお手軽な家庭料理だ。

スペインではどこの家庭でも生ハムやチョリソ(ドライソーセージ)を常備しており、それを使うのが常だが、残念ながら我家の常備にはベーコンブロックしかないので、それを使うことにした。

ベーコンは大きめのサイズにザクザクと切る。玉ねぎは適当に刻み、ニンジンはベーコン同様の大きさでザクザクと、セロリとピーマンがあったのでこれもザクザク。トマトも少々。これをたっぷりのオリーブオイルで炒める。

レンズ豆は水に浸さず、洗ったらそのままザルに上げて、そのまま炒めた具の鍋に入れ、水少量とワインをザブザブと加えて、そのまま煮込む。我が家では無水鍋を使っているので、だいたい10分から15分程度か。レンズ豆が適度に柔らかくなり、肉や野菜の味を含むようになればよい。

僕は調味に塩と黒コショウしか使わないが、ニンニクを加える方が一般的かもしれない。家庭料理に決まりはないから、各々好きに味を付ければいい。

モン テンプラニーリョはこの家庭料理にうまく合わせてくれた。隠れていた酸がしっかりと存在感を示してベーコンの脂を制御し、上品なタンニンは脂の先にある旨味を引き出してよく馴染む。家庭料理がずいぶんと格上になった。

いい意味で格上のワインがもたらす、料理を格上にしてしまう効果を実感。あっぱれな技あり連発的な凄いワインだ。

ベーコンではなく、ハモン(生ハム)やチョリソー(メキシコ風ではなくスペイン風のサラミのような)ならば、もっと複雑な発酵した肉の味と結びついて昇華させるだろうし、料理屋ならば、骨付き仔牛やラムを焙って一緒に煮込んだりしてもっと付加価値を付けるだろう。

スロー モンに較べると、しっかりした酸とタンニンの存在もあり、よりしっかりとした料理に合わせたいワイン。意識して使い分けたい。生産本数は9,382本。

田村安

マヴィ代表
著書の「オーガニックワインの本」(春秋社刊)でグルマン・クックブック・アワード
日本書部門2004年ベストワインブック賞を受賞
フランス政府より農事功労章シュヴァリエ勲章受勲
ボルドーワイン騎士Connétablie de Guyenne

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