【第2回】神山町と桜の話
徳島・神山町で人気の「カフェ オニヴァ」長谷川浩代シェフの連載
徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…これから定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は、現地の桜の名所とロゼワインの話も♪[月2回更新]
■町全体が淡いピンクに包まれる季節
コロナウイルスの蔓延で心穏やかでない昨今。お元気でお過ごしでしょうか。普段通りの生活ができずお困りの方も多いと思いますが、三寒四温の言葉の通り、季節は着実に春に近づいていますね。この時期になるといつも、小学生の頃教科書で読んだ、大岡信さんの「言葉の力」という文章に出てくる、染色家・志村ふくみさんとの一節を思い出します。
「・・・・春先、間もなく花となって咲き出でようとしている桜の木が、花びらだけでなく、木全体で懸命になって最上のピンクの色になろうとしている姿が、私の脳裡にゆらめいたからである。花びらのピンクは幹のピンクであり、樹皮のピンクであり、樹液のピンクであった。・・・・・」
この鮮烈な文章が脳裏にあるからなのか、この時期の神山町は、まだ開花してなくとも町全体が淡いピンクの靄に包まれているかのように感じるのです。
神山町は枝垂れ桜の名所。普段はとてものどかで車通りも少ないこの町に、渋滞を引き起こすほどの人が各所から訪れます。京都出身の私は、加茂街道や円山公園、著名な神社仏閣のお庭など桜の名所をあちこち見てきたはずですが、この見事な神山の桜にはとてもかなわないなあと思うほど圧巻です。
■素晴らしい景色も人々の気持ちから
それもそのはず、実に6000本ほどの枝垂れ桜と八重桜が「神山さくら会」という、今から20年近く前に地元の方が立ち上げたNPO法人によって1本1本植えられてきて、今も続いているからなのです。特に枝垂れ桜は普通の桜と違い、植えたら必ず支柱が必要で、管理に手間と労力がかかるため、これだけの数を植えているところは日本広しといえどもここだけではないかとのこと。斜面を掘り、植樹をし、杭を打って、雑草が生えてくれば下草を刈って・・・と絶え間ない努力が続いた結果、今の私たちは毎年これ以上ないほどの美しい景色を目にすることができるのです。
ここ神山町に来て、自然の中の名所は、そこに住む人たちの支えによって美しく守られているのだということを目の当たりにすることになりました。棚田の菜の花も、雨乞いの滝も、樹齢600年を超える乳銀杏の木も、辻々のちょっとしたスペースに植えられている美しいお花も、みんなそれぞれ町を美しくしたい、訪れた人たちの喜ぶ顔を見たい…と願う人たちの活動が作ってきた風景なのです。自治体や庭師の方が仕事として取り組んだ景色だけでなく、町の人たちの自発的な気持ちでできあがったこの風景。
今日の活動が将来の美しい姿につながっている一例です。 神山には有名な場所、隠れ家的な場所を問わず、個人の方々が植えてくれた桜の木があちらこちらにあります。(今日も偶然にも2ヶ所も教えてもらいました!)
■桜色ロゼにぴったりなタルタル!
普段の年であれば、これからの季節は町がもっとも賑わう時期。私たちのカフェ オニヴァにもたくさんのお客様が立ち寄ってくださいます。カバニスさんの桜ロゼも、ラベルを見て味わって、みなさんのテンションが上がる1本(※こちらの商品はおかげ様で売り切れ間近です!3/25 現在:編集部注)。先日は刻んだマグロにみじん切りにしたケイパー、マスタード、ピクルスとオリーブオイルを少々、仕上げにうずら卵の卵黄を載せたタルタルにグリーンサラダを添えた前菜を作ってみました。マスタードなどの酸味と、それを包み込むオイルや卵黄、そしてマグロの濃厚な食感がロゼにぴったり。気軽に作れる一品なので、ご自宅でのワインのおつまみにもお勧めですよ。
※今年の神山町の開花具合は例年より少しだけ早いかな?とのことで、これら桜の写真は以前の“ とっておき ”を拝借致しました。来年は是非、現地を訪れてみてはいかがですか。
マグロのタルタルにおすすめロゼワイン
記事の中で出てきたマグロのタルタル!桜ロゼ以外でも辛口のロゼワインとぜひお楽しみください。
桜 オーガニック ロゼ | |
シャトー ド ルー ロゼ | |
コート ド プロヴァンス ロゼ | |
ガスコーニュ ロゼ |