ボジョレーヌーヴォー2022をビストロ料理で
2022年は歴史に残る偉大なヴィンテージ
2022年、ヨーロッパは動乱の年。ウクライナ戦争は21世紀の汚点として記憶されるだろうが、ワインの世界では猛暑と乾燥も併せて記憶すべき年だ。気温が40℃超え、大河が干上がり遺物が水底から現れる光景が報道された。20世紀の大ヴィンテージの1959年を超えるかどうか、大きな期待を持ってボジョレー ヌーヴォー解禁日を迎えた。
まずはそのまま飲んでみた
シュブランさんのボジョレーヌーヴォー2022年を抜栓、グラスに注ぐ。まず色の濃さに驚く。とてもヌーヴォーとは思えない、赤ワインの色だ。
口に含むと「やや甘口」。強い果実味がしっかりとあり、とにかく濃い。酸味はあるのに、糖をまとっていて柔らかく、口の中には美味さが広がる。香りは新酒らしいというか、生産者の蔵でタンクから直接グラスに注いで試飲する時のような若々しさ。
アペリティフでこのまま飲み続けていたいと思う程に後を引く。まさに「いくらでも飲める」。こんな凄いボジョレーヌヴォーは飲んだことがない!
ポークソテーとボジョレーヌーヴォーのマリアージュは?
ワインだけでも飲み続けられるほどのヌーヴォーなので、凝った料理は不要。チーズとバゲットだけでも十分だろうが、あまりにも手抜きと言われそうで、サクッとビストロ料理で合わせてみることにした。
選んだのはポークソテー。我家ではロースではなく、脂のないフィレミニョンを使う。こんなに美味しいアペリティブ感覚のワインに、こってりした脂感はそぐわないだろうし。
フィレミニョンは輪切りに
フィレミニョンとは背骨に沿った細長いフィレの中でも、尾に近い細くなった部位なので、フィレブロックを買う時、なるべく断面の小さいものを選ぶ。これが柔らかく美味しい。
肉は冷蔵庫から出したばかりでは調理には使えない。冷蔵庫で氷温~5℃に冷やしておくのは劣化を防いで保存するためで、そのまま加熱すると肉の表面だけが焼けて、中は火が通らない。なので調理の少なくとも30分以上前に冷蔵庫から取り出して室温に戻しておこう。
これを適当な厚さで輪切りにして、焼く直前に塩コショウをほんの少し振る。これは本当に直前で、塩が肉に染み込まない内に、フライパンに載せる。そうそう、フライパンは必ず軽く温めておこう。気を付けるのは熱し過ぎたフライパンだとパサパサになるから、これは注意。
強火でちょっと焼いてひっくり返し、蓋をして火を止めて、しばらく余熱で放置。僕はここでほんの少しセガンさんのコニャックを加えて香りを移している。
皿にはONZEさんのミックスマスタードを添えてみた。
付け合せも手早く
順序が逆になったが、肉を室温に戻している間に付け合せを準備しておく。
ジャガイモは皮を剥かずにザクザク切って塩茹で。10分間くらい茹でたらザルに上げて水を切り、潰す。皮は好き嫌いがあるかもしれないが、抗酸化作用もあり、慣れると美味しい。
ニンジンは皮付のままおろし器で千切りにして、塩、ワインビネガー、ゴメス ネヴァドさんのオリーブオイルをかけてよく混ぜ、キャロットラペに。
彩に緑が欲しいので、熱湯で柔らかくしたピーマンを千切りにして添えてみた。
だいたいこれで30分間くらい潰せただろう。
フィレミニョン ポークソテーとボジョレー ヌーヴォーの味わいは?
まずはマスタードを載せずに食べて、ボジョレーヌーヴォーを口に含む。美味しい。ワインの酸は糖に包まれていて、肉汁の旨味を切らないでよく馴染む。
ミックスマスタードを載せてみると、このマスタード特有の甘みが加わって、ワインの甘みと結びついて、よりしっくりと美味しさが引き立つ。
もちろん、ボジョレーなので付け合わせのイモやニンジンといった根菜類とも相性がいい。とにかくワインが美味しいので、ついついグラスが進む。
今年のボジョレーはウクライナ戦争と円安の影響で過去最高額となってしまったが、完全にプリマ(主役)を取れるワインに仕上がってくれてホッとしている。存分にその魅力を引き出せるよう、ぜひ華美過ぎないビストロ料理で味わっていただきたい。
田村安
マヴィ代表
著書の「オーガニックワインの本」(春秋社刊)でグルマン・クックブック・アワード
日本書部門2004年ベストワインブック賞を受賞
フランス政府より農事功労章シュヴァリエ勲章受勲
ボルドーワイン騎士Connétablie de Guyenne
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