TBシャルドネ|新着のラングドック白ワインを試す
シャルドネという品種はカメレオン
人気品種シャルドネというとブルゴーニュを思い浮かべる向きも多いと思う。しっかり樽の香りが付き、力強いため、バターやクリーム系の古典的な重いフランス料理との相性が抜群の優等生ワインを。
しかしながら、品種としてのシャルドネはニュートラルで癖がないのが特徴。栽培地、醸造方法によって大きく味わいが変化し、まるでカメレオン。
むしろ「テロワールと文化、造り手の思考を正直に反映して奥深さが生まれる」ことが実感できる品種がシャルドネなのだ。
ブローのテロワールをストレートに感じるTB
今回の新着、TBシャルドネの造り手はファビアン レヴォルさん。マヴィ開業以来23年間お付き合いしたタリさんが引退し、その農場を引き継いだレヴォルさんだが、ガブリエル タリの文化と思考は一切引き継がなかった。
TBとはフランス語Terre de BRAUの略語で訳すと「ブローの大地」、TBシリーズはすべて単一品種のワインで、このドメーヌの土壌の特長をストレートに感じることができる。
ブローのシャルドネが植えられている畑は、岩盤の上に薄く土壌が載っているだけで、ぶどうの根は岩盤の裂け目に潜り込み、多様なミネラル分を含んだ水を吸い上げる。まるでブルゴーニュのコートドールの丘の斜面畑のように。
かつて、ガブリエル タリはこのシャルドネを新樽で仕込み、バター、クリーム文化に溶け込むワインに仕上げた。
一方、ファビアン レヴォルは若い頃アジアで暮らしたこともあり、発酵した調味料の酸を好む。同じテロワールのシャルドネを、低温醸造で樽を一切使わない醸造方法で、バターやクリームではなく、醤油や鰹節やニョクマムや酢に馴染ませた。
近未来指向のTBシャルドネ
彼は昔のフランス料理と決別し、現代と近未来のフランス料理を指向しているのだ。蒸気機関が主役だった時代と、スマホ一つで何でもこなせる現代では、体が必要とするカロリーの桁が違うのだから、フランス料理が昔のままであるはずもない。
この点、日本のフランス料理は、以前からヘルシー志向でも楽しめるように工夫されており、ずいぶん先駆けている。
また現代のフランスの若者の「料理を楽しむのに食中酒は欲しいが酔いたくはない」という要望に合わせてアルコール度数を1%以上低く抑えている。
和食やベジタリアン、ヴィーガンに寄り添うシャルドネ
まずは試飲。アルコール度数を低く抑えたせいだろうが、香りは控えめだ。冷やし過ぎは禁物。セラー温度と冷蔵庫の中間位の13~14℃くらいが美味しい。
畑のすぐ下の岩盤のミネラル水がもたらす力強さがあるが酸は控えめ、バターやクリームには馴染まない。鶏や豚肉、ホタテなどと合いそうだ。
TBシャルドネはラベルに「convient aux végans(ヴィーガン向け)」の表記もあり、ヴィーガンフレンドリーなワインでもある。
TBシャルドネと鶏のもも肉つくね鍋
初日に合わせたのは鶏のもも肉+ももつくね鍋だ。
特に出汁は用意せず、平飼鶏のもも肉と根菜類を水から炊くだけで美味しい出汁になる。味付けは薄口醤油と白扇みりんのみ。
つくねはもも肉のひき肉とむね肉のひき肉を半々で混ぜ、細かく刻んだネギを1本、おろしショウガとみりんと醤油を少々練り込み、スプーンで団子にして沸騰した鍋に落とし煮込む。
熱いつくねや野菜をフーフー吹きながら食べ、シャルドネを口に含む。「美味い!」。
よい相性だ。TBシャルドネは力は強く酸は弱めなので、鶏肉(平飼いの銘柄鶏)とも根菜類ともしっかりとバランスしてくれる。
TBシャルドネと豚小間ネギ炒め
二日目は豚肉を合わせてみた。
豚小間とネギを炒めて、白扇みりんと薄口醤油とおろしショウガで味付け、仕上げに大根おろしを加えたところ、こちらも鶏肉同様によく合う。
ただTBシャルドネの酸味が弱めなので、脂の強い部分よりも肉の部分の方が相性はいいようだ。
付け合せに赤ワインビネガーとオリーブオイルで味付けした千キャベツ、潰しジャガイモ、ミョウガの酢味噌和えを添えてみたところ、TBシャルドネは酢とも喧嘩せず、無難にこなしてくれた。
田村安
マヴィ代表
著書の「オーガニックワインの本」(春秋社刊)でグルマン・クックブック・アワード
日本書部門2004年ベストワインブック賞を受賞
フランス政府より農事功労章シュヴァリエ勲章受勲
ボルドーワイン騎士Connétablie de Guyenne
2024年ボジョレーヌーヴォー到着