TBヴィオニエ|新着のラングドックワインを試す
醸造方法や産地で変わるヴィオニエ
ヴィオニエはローマ時代に北イタリアからローヌに持ち込まれた長い歴史のある品種だ。僕にとっては子供の頃から親しんだコンドリューの印象が強いのだが、現在はラングドックの方がたくさん栽培されているらしい。
同じヴィオニエながら土壌も醸造方法もまったく違い、岩山の急傾斜畑で育ったヴィオニエを樽熟させて、古典的なフランス料理に対峙できるコンドリューと、比較的平坦な畑で育ったヴィオニエをステンレスタンクで仕上げるラングドックでは、似た味わいはない。
ブローのテロワールとヴィオニエ
TBヴィオニエの畑は厚みのある土壌の下に岩盤がある。深く岩盤層まで根を張ったぶどうの樹はミネラル水をしっかりと汲み上げて育ち、北ローヌに似たボディーの重さをワインにもたらしてくれる。
コンドリューのようにも仕立てられそうだが、ファビアン レヴォルは樽を使わないので、フレッシュな桃や杏の果実のかわいらしい感覚を持ちながら、力のあるワインに仕上げている。
和食やベジタリアンに指向したヴィオニエ
まずは試飲。アルコール度数を13%と低く抑えたせいだろうか、香りは控えめだが、果実のかわいらしさは感じる。絶対に冷やし過ぎず、むしろセラー温度位のほうがいい。
酸は弱いものの辛口。バターやクリームではなく、脂の少ない鶏や豚が合いそうだ。
TBヴィオニエと豚しゃぶ
初日に合わせたのは豚しゃぶだ。
肉はバラや肩ロースだと脂ギッシュになるから避けて、脂の少な目のロースにした。
タレはゴマダレ。たっぷりの白ごまをすり鉢で摺り、味噌と白扇酒造の本みりん、田宮農園のゆず酢を少々足した。これを鍋のスープで延ばす。市販品もあるが、摺りたてのごまは香りの立ち方が違う。
しゃぶしゃぶしたロースを食べ、ヴィオニエを口に含むと、肉の余韻を切ることがなく、まるで包み込むように美味しさが長く続く。
卓上のヴィオニエは徐々に暖まって果実味が増してくるが、しゃぶしゃぶするごとに肉の旨味がスープに溶け込み濃くなるので、ちょうど釣り合いが取れるのもいい。
TBヴィオニエと地鶏もも肉の塩焼き
二日目は地鶏を合わせてみた。
皮を剥がし、脂を掃除しながら一口大に切り分け、油を引かないフライパンで焼きながら軽く塩を振るだけのヘルシー料理で、鶏の味が全てだから決してブロイラーでなく、地鶏でなければならない。
付け合せは潰しジャガイモ、箸休めは塩揉みして絞ったナスを添えた。
TBヴィオニエは、口の中の地鶏の風合いを一切損ねることなく、混じり合い美味。ナスの苦味ともしっくりと絡んでくれた。
TBヴィオニエとピザ
三日目は冷凍食品のピザ。
このヴィオニエは開栓後日が経つにつれて味も香りも増して、力強くなってきたので、手抜きということではなく、溶けたチーズやベーコンの脂も大丈夫なのでは?という実験だ。
付け合せはバルサミコ酢を絡ませたベビーリーフサラダと、グリルで焼いたかぼちゃ。
果たして実験は成功。力強く変化したTBヴィオニエはピザのチーズやベーコンにも押されることがなく、堂々と受け止めて美味しく仕上げてくれた。酸の弱いバルサミコ酢ともきれいな相性を見せ、かぼちゃの甘さも断ち切られず、混じり合ったハーモニーが楽しめた。
田村安
マヴィ代表
著書の「オーガニックワインの本」(春秋社刊)でグルマン・クックブック・アワード
日本書部門2004年ベストワインブック賞を受賞
フランス政府より農事功労章シュヴァリエ勲章受勲
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