ボジョレー解禁とトスカーナのワインを比べて楽しむホームディナー
コロナ感染拡大の中、今年のボジョレー解禁はリアルイベントを行えず、オンラインで開催、おかげでマヴィ開業以来初めて解禁日のディナーを家で食べることになった。
こういう時にありがたいのがフレンチレストラン「レザントレ コウジイガラシ オゥ レギューム」のお取り寄せグルメセット。
今回は「ボジョレーヌーボースペシャル!」メニュー
グルメセットは真空パックに詰められたお料理が、前菜のパテ、その付け合わせのピクルス、スープ、ペンネ、メインの肉料理、デザート、おまけのカレーがそれぞれ真空パックに分かれている。
同封されているメニューには五十嵐シェフの奥様の美香さんが、真心を込めて書き込みをしてくれているのが嬉しい。
冷製前菜とボジョレー ヌーヴォー
前菜は冷製、鹿肉と豚肉のパテにピクルス。
五十嵐シェフのお料理は、お店でいただくと素晴らしくきれいな盛り付けで、もっとおいしい。普段ならカラフルな野菜を散らして彩を足したいところだが、今回はオンライン解禁イベントのバタバタなので、最低限だがわさび菜を敷いただけで我慢。
シュブランさんの2020年オーガニックボジョレーヌーヴォーは、酸も糖もしっかりとしていて香りも華やか。間違いなく最高の出来の一つ。パテとの相性はバッチリと決まった。
冷製前菜とシーネフェッレ トスカーナ ヴェッキエヴィーニェ
五十嵐さんの料理と合わせて見たかったもう一つのワインが、イタリア・トスカーナ州フィレンツェの郊外のオーガニックワイン生産者で外科医のモレッティ先生の新作、シーネフェッレ トスカーナ ヴェッキエヴィーニェだ。
イタリア語のヴェッキエヴィーニェは、フランス語でヴィエイユヴィーニュ。樹齢の古いぶどうだけを使用した特別なワインで、量は取れないが質は最高。今回の鹿と豚のパテが負けるほどに果実味あふれる銘酒。本当はモレッティ家を訪問した時にいただいた、モレッティ先生お手製のドライソーセージくらいの強さだとちょうどいいのだが。
うーん、ワインがあまりにも美味すぎる。。。
メインは大山鶏のコックオウヴァン
フレンチの真骨頂はソースに尽きる
コックオウヴァンは鶏モモの赤ワイン煮込み。鶏肉は白ワイン向きの肉なのだが、コックオウヴァンは赤ワインを使ってじっくり煮込み、しっかり味を移らせることで赤ワインに合わせる。ボルドーでもブルゴーニュでも銘醸赤ワインとの相性が生み出される。
今日の主役であるシュブランさんのボジョレーヌーヴォーと五十嵐シェフのコックオウヴァンの相性は〇というか絶妙。
しかし、シーネフェッレ トスカーナ ヴェッキエヴィーニェとのマリアージュは△、五十嵐シェフはボジョレーに合わせた軽めの味わいに仕上げていたので、フルーティーさが半端ないトスカーナには太刀打ちできない。
もちろん煮込みに使うワインを重いワインにしたり、塩分の調整をすればある程度は合わせられるのだが、ここまでの銘酒には料理の基本設計から変更するほうがよい。
コックオウヴァンは味付けをいじれば幅広い赤ワインとのマリアージュを決められる、極めて懐の深い料理。家庭で作る時は、ぜひその日に飲みたいワインを使って煮込んでみて欲しい。だいたい決まるはずだ。飲める量はだいぶ減ってしまうが、美味いがなにより!
ボジョレーとトスカーナを比べると?
さて、今回は同じ料理をボジョレーヌーヴォーとトスカーナ(キャンティ)で較べてみたが、あまりにも性格が違うので評価しがたい。
ただ五十嵐シェフがボジョレーに向けた料理にはやはりボジョレーヌーヴォーがいい。またアペリティブとして飲みたければ、これも断然シュブランさんのボジョレーヌーヴォー。
しかし今回の料理を離れた絶対的なポテンシャルでは、モレッティ先生の自信作は圧倒的な存在感を見せた。繰り返すのは好きではないが、はっきり言って美味すぎる。
ボトル1本抱えてずっと飲んでいたい。トスカーナ ヴェッキエヴィーニェの合わせは本格的な生ハムか乾いたソーセージ、またはジビエのメイン料理か。デザートなら溶けたチョコレート。
残念ながら、シーネフェッレ トスカーナ ヴェッキエヴィーニェは極少量生産なので、存在に気付いた方で終わってしまうかもしれないが、このチャンスを逃さないことをぜひおすすめしたい稀有な1本である。
フィレンツェの郊外のオーガニックワイン生産者で外科医のモレッティ先生の作品。ヴェッキエヴィーニェは,樹齢の古いぶどうだけを使用した特別なワインで、量は取れないが質は最高。自然農法、酵母もSO2も無添加で、可能な限りナチュラルなワイン造りに徹する。医師として完全な微生物汚染を制御する術を熟知しているため、自然派ワインにありがちな味や香りの乱れとは無縁の秀逸な生産者だ。
田村安
マヴィ代表
著書の「オーガニックワインの本」(春秋社刊)でグルマン・クックブック・アワード
日本書部門2004年ベストワインブック賞を受賞
フランス政府より農事功労章シュヴァリエ勲章受勲
ボルドーワイン騎士Connétablie de Guyenne
マリアージュの基本は料理の味とワインの味の対比。
料理を味わいワインを一口、これを〇X△で評価してみてください。きっと、これまで気づかなかった発見があるはずです。
2024年ボジョレーヌーヴォー到着