ナチュール シラー|新着ラングドック SO2無添加ワインを試す
シラーは作り込まれたフランス料理用だろう
ソーヌ川をブルゴーニュからボジョレーへと南下し、リヨンでローヌ川に合流し更に下り、空に青さと陽光が増したら、流れは大きな岩山にぶつかり左右に向きを変えるところ、ローヌの銘醸地コート ロティ、力強いシラーの産地だ。
フランス駐在時代、30歳代で毎日フランス料理を食べていた頃の僕が大好きだった懐かしい思い出のワイン。ソースが作り込まれた牛肉料理には、それ相応の樽の効いたワインが必要で、ブルゴーニュよりはお安く、毎年いい気候でヴィンテージのはずれがないというのも魅力だった。
ところが日本に帰国すると、ギャップに体が付いて行かなくなり、一時期はベジタリアン生活まで経験、重くて濃い樽の効いた赤ワインからは遠ざかってしまった。近年また肉を食べるようになったのだが、健康志向の白い豚肉や鶏肉が主で、なかなかシラーには届かない。
シラーで家庭料理なんて…
新着のシラーを試さないといけないのだが、実を言うと嬉しくなかった。家で牛肉は滅多に食べないし、凝ったソースを作ることもない。僕にとってのシラーはコート ロティ、体というよりか心に染み付いた味からは、家庭料理で試すのは論外な挑戦に感じたのだ。
しかし、樽を避けて軽やかに仕立てることを是とするレヴォルさんのシラーなら、あっさりとした豚肉や鶏肉でもいけるのではと気を持ち直し、実験してみることにした。
ナチュール シラー 2022を試飲
まず試飲。色はルビー、しっかりと濃い。香りラズベリー系とちょっと胡椒。こわごわと口に含むと美味しい。アメリカンチェリーや濃いベリーやちょっとダージリンティーも。しっかりした味わいだが、さわやかさが勝つので、牛肉でなくてもいけそうだ!
ナチュール シラーを豚肉と白菜のミルフィーユに合わせる
土鍋に白菜を敷き、豚肉を載せ、その上に白菜、また豚肉と重ねて蒸し上げる。子供の頃に母がよく作ってくれた冬の料理だが、今は「豚肉と白菜のミルフィーユ」という洒落た名前が付いている。我家の味付けはみりんと薄口醤油、お好みでゆず酢とあっさりの和風。
通常は日本酒か、ワインならばリースリングとかピノグリだろう。シラーとは縁遠い料理に思えるが、ナチュール シラーはすんなりと手を組んでしまった。シラーのタンニンが邪魔になっておらず、豚肉の脂身と絡み合ってくれる。
豚肉を赤ワインで合わせたい時の有力候補に入れておこう。
ナチュール シラーを鶏もも肉とごぼうの照り焼きに合わせる
二日目は鶏料理。
鶏肉は塩だけ振って焼くことが多いのだが、さすがにシラーでは難しかろうと、照り焼きにしてみた。
ビニール袋におろした生姜とみりんと濃口醤油を入れて、鶏もも肉を放り込み、空気を抜いて口を結び、揉んで馴染ませる。このまま10分ほど放置。鶏もも肉を取り出してフライパンで焼くだけだ。焼きあがったらザクザクと食べやすいように切る。
ビニール袋に残ったマリネ汁は、薄く切ったごぼうとネギに混ぜて炒める。
ナチュール シラーの酸は鶏の脂も皮とよく馴染み、タンニンやベリー系の風味はごぼうの苦味としっくり調和する。パーフェクトマッチで、しかもフライパン1枚でできるお手軽メニューだから、ぜひお試しあれ。
ナチュールの魅力
今回、レヴォルさんの試作ワインのナチュール シャルドネ、ナチュール ピノノワール、ナチュール シラーを日常的な食卓で合わせてみたが、どのワインも市場に出回る同じ品種のワインとは大きく違うことがよくわかった。
とにかくワインとして口馴染みがいいし、料理とも喧嘩することがないのだ。そのくせ、品種の持ち味は出し切っている。ワイン界のこれまでの常識が一切通用しないようだ。
もしかしたら、量産という通念を度外視した試作品だから、毎日検査したり完全な温度調整などが可能なだけかもしれない。しかしこんなことをやってみようという醸造家は非常に少ないだろう。
このワイン達を日常の食卓に登らせるのはちょっと贅沢なことかもしれないが、もしこの実験にご興味を持たれるようなら、近未来のワインマリアージュを試してみられることをおすすめする。
田村安
マヴィ代表
著書の「オーガニックワインの本」(春秋社刊)でグルマン・クックブック・アワード
日本書部門2004年ベストワインブック賞を受賞
フランス政府より農事功労章シュヴァリエ勲章受勲
ボルドーワイン騎士Connétablie de Guyenne
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