MON カヴァ｜新着のスペイン スパークリングワインを試す
コティーノ家のカヴァ
ここ数年来、僕の家ではコティーノ家のSOLOカヴァが日常のスパークリングワインとなっていて、飲みたい時にいつでも飲めるように冷蔵庫に常備している。シャンパンやクレマンに較べて値段が安く、それでいながら十分に美味しいこのカヴァは、主張が激しくない優等生で、夕方ちょっと一杯飲みたい時や、和食中心の食生活でも十分楽しめるので、僕のお気に入りだ。
ただその分、重めの料理にはちょっと物足りないので、しっかりとした西洋料理の時はシャンパンやクレマンを選ぶことになる。僕のようにいろいろな国のワインを選べるならばそれで構わないが、生産者のパコ・コティーノさんにとっては、自分のスパークリングワインでVIPをもてなしたい。そこで造られたのがMONのカヴァだ。
華麗なる一族とオーガニックワイン
コティーノ家は財閥と言ってもいいバレンシアの名家で、パコの叔父さんはバレンシア州の首相を務めたほど。地中海沿いの高速道路はコティーノ傘下の企業が建設したと聞く。パコはその一族だがワイン趣味が高じて、廃業するワインドメイン・アランレオンを購入、ワイン造りにのめり込んでしまった。
資金を投入して畑も醸造設備も大改良、最初に造ったのがSOLO。美食に慣れたパコの舌が十分に美味しいと感じるオーガニックワインを世に出した。さらに日常用のBLESを追加して、毎日の食卓で自分のワインを飲めるようにした。
しかしVIPとの会食にはちょっと物足りないことから、パコはアランレオンよりも標高の高い場所にあるモンテサンコの畑を購入、ほぼ打ち捨てられて廃墟同然だった建物に、惜しげなく資本投下して、最高のワイン造りを目指した。
最高峰MONの誕生と発展
モンテサンコの畑には長いこと農薬も化学肥料も撒かれておらず、若木への植え替えを怠っていたため古木がそのまま残っていて、なんと樹齢100年を超すボバルの畑まであった。ここから生まれたのがMON ボバル レセルバ、VIP席のメインコースはこれで決まった。
僕がコティーノ家を訪問した2019年、パコはMONカヴァの試作を行っていて、飲ませてもらったが、SOLOカヴァの完成度に較べると、コンセプトがハッキリと見えてこない感じでイマイチと感じた。
しかしコロナで再訪できない間にも、パコのプロジェクトは躍動していたようで、昨年秋にzoomで会議をした際、MONシリーズにカヴァ、テンプラニーリョ、スローMONの3種を追加したから紹介したいとのこと。
試作ではなく正式に発売したというので、とりあえず少量をフランス発のコンテナに積んで運んで試すことにした。
カヴァ レセルバ ブリュット ナチューレ
色は美しい泡目の黄金色、本当に細かい泡は切れることなく、香りは立つ。Brut Natureらしくキレのいい辛口だが、芳醇なコクがある。僕の経験したことのないカヴァというか、カヴァの範疇を超えて、極めて上質なシャンパンのようだ。もちろん品種はマカベオなのでシャルドネよりは軽やかなのだが、満足感は半端ない。
焼ブロッコリとカヴァ
ポランから届いたブロッコリがあったので、ネヴァドさんのオリーブオイルをふりかけ、アルミホイルに包んでグリルで焼いて塩を軽く振り、カヴァに合わせてみた。
きっとブロッコリが負けるだろうと思っていたのだが、モン カヴァは見事に合わせてきた。ねじ伏せもせず、しっかりと馴染んで味を引き出してくれた。美味い。
トルティーリャ（スパニッシュ オムレツ）とカヴァ
いつもはジャガイモと玉ねぎだけで作るスパニッシュオムレツだが、少し味を濃くしたくてベーコンを刻んでみた。卵は少し生臭みが残ってくれるように完全には焼き上げず、若干半熟を残してみた。
モン カヴァはきれいに卵の生臭みを切ってくれて、さわやかな感覚で愉しめた。実に鮮やか。
シリアルナンバー 1455/3,780
シャンパンとカヴァのいいとこ取りしたようなワインで、完成度はかなり高い。西洋料理はもちろんだが、それだけでなく日本料理店や旅館に持ち込むのもアリだろう。
次回の船で持って来ることができれば、夏前には届くだろう。楽しみだ。
ラベルには製造ナンバーが印字されており、生産本数は3,780本と極少量生産なのがわかる。ちなみに僕が飲んだのはNo.1455。おそらくコティーノ家のパーティーやVIP用に取り置きされるはずだから、販売用にはどれだけ残っているのかが気がかりだ。
田村安
マヴィ代表
著書の「オーガニックワインの本」（春秋社刊）でグルマン・クックブック・アワード
日本書部門2004年ベストワインブック賞を受賞
フランス政府より農事功労章シュヴァリエ勲章受勲
ボルドーワイン騎士Connétablie de Guyenne
