ガリシア~ポルトガル、ノスタルジックな夏休み5
La Pobra de Caraminalでの昼食は港から一筋入った路地で、タパスのおいしそうなbarを見つけ、ゆで蛸、鰯の塩焼きに季節のサラダをリベイロの酸っぱい白ワインに合わせます。何の気取ったものもない店内のテレビでは北京オリンピックの水泳の中継が流れています。
私が学生だった1979年から80年当時、スペインは独裁者フランコの死からまだ数年しか経っておらず、経済封鎖の名残りもあって生活は貧しく、テレビは白黒でもぜいたく品。一般家庭にはなくて当然という状況で、人の集まるbarに置かれたテレビにたくさんの人が寄っていました。国営放送しかなく放送時間も短くて、たしか午後3時くらいからだったように記憶しています。85年にEUに加盟してから経済急成長を続けて、豊かにはなったものの、ヨーロッパから一足飛びにアメリカ風になってしまったようで、日本とも通じるものを感じます。とはいえ、ガリシアの辺境の漁港では時が遡っているような、心地よい名残りを味わえました。
昔と違い、スペインでも飲酒運転が取り締まられるようになってしまったので、リベイロはグラス2杯に留めて、最果ての灯台を目指して道を続けます。灯台のあたりは日本の岬巡りでも見慣れた寂しい景色で、「これで陸地はおしまい」という宣言のような感じで好きな風情です。さらに道を進めて、海岸沿いの自然公園は砂浜と巨岩の奇観。松林を抜けると、ハマナスやら砂丘に咲きそうな植生の中を砂浜へと木道が降りていきます。実はこの章を千歳行きのJAL機内で書いていますが、その先の網走あたりでも似たような景色に出遭ったことをふと思い出したりもしています。そこではオホーツク海に面した海岸沿いの国鉄路線がだいぶ前に廃線になり、かつての駅跡にSL9600型と客車がひっそり保存されていたことも。
灯台を後にして、予約しているホテルのある、入江に面した町Noiaへと田舎道を走ります。喉が乾いたのでミネラルウォーターを買おうと思っても、途中通り過ぎる集落はどこも人影がなく、もちろん店もなし。1時間半走り続けてようやくスーパーを見つけて停めたところがもう目的地Noiaの町外れ。うらびれた景色が一転して途端に石造りの街になるのがスペインです。