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マヴィ史

マヴィ設立以来のこと4

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オーガニック認証制度

最初に焦点を当てたのは当時最もホットなテーマのオーガニック認証制度です。ヨーロッパではオーガニック農業を支える人々の中から、ホンモノとニセモノを見分けたいという要望が生まれ、遠くに住む消費者のために誰かが現地を調べて保証する、という認証制度が民間で生まれました。オーガニック農業は慣行農業よりも生産コストがかかります。化学肥料や農薬を使わないということは、単位収穫量が少なく、病虫害リスクが高く、手間がかかります。その分を消費者が高く支払うことで成り立っているのですから、ニセモノが出て不当な利益を得るようなことがあってはなりません。この民間認証制度を長く続けたことで、しっかりしたオーガニック生産者が育ち、ある程度の市場規模ができてから、公的な国家認証制度へと発展していきました。すでに1980年代終わりまでには国ごとの認証制度が整い、EU共通市場へと対応するための国際認証制度の基礎が確立していました。
ところが日本ではこのような民間活動がなかったのです。これには国民性の違いが大きいと思います。ヨーロッパ人(特に北の)は容易に他人の言を信用せず、確証を求めます。
なにしろ大陸国家というのは、隣町は言葉も通じない他民族国ということもあり、疑うことが当たり前です。一方日本人は他人の言うことを素直に信用しがちです。日本が海に囲まれた島国であり、日本人誰もが同じメンタリティーを共有していると思い込み、疑うということ自体が悪いことであるかのように錯覚しているからです。

そもそも食品の認証制度はユダヤ教から出たものでしょう。コーシャー認証といって、食べても良い食品を認証する制度があります。ラビと呼ばれる聖職者が生産現場を視察して、原料や加工作業がユダヤ教の戒律で禁じられているものではない、ということをしっかり確認してお墨付きを出します。調査は事が宗教ですのでとても厳密で、費用もかかりますが、生産者にとってお金持ちのユダヤ人は重要な顧客ですから、欧米社会、特にアメリカに広く普及しています。一般消費者にとってもコーシャー認証が付いているということでトレーサビリティーがしっかりしていることの証ともなり、多くの食品にこの認証マークが付いています。スーパーマーケットによってはリスティングの条件としているところもあるほどです。おそらくこの認証制度はユダヤ教会にとって、かなり大きな収入源となっているのではないかと思いますが…。

信用しないから認証制度が必要なので、信用することから始まる島国での村社会的な関係では不要なものです。ましてやオーガニックというものが理解されてもいない日本ではJAS有機認証制度の導入はあまりにも唐突すぎました。守るべきホンモノをしっかり持っているからニセモノを排除しなければならないのに、そうではない。それにヨーロッパのオーガニック認証制度を単に和訳しただけの、運用する役人や生産者、流通者たちさえ理解していない制度がなぜできなければならないのか、EUの制度やその運用状況を聞けば聞くほど、JAS有機認証制度は何かが間違っていると感じました。一言で言うと無用の枠組みとでもいうべきもの。

誤解を承知で例えるならば、高速道路ができる前の、誰も時速60km以上の速度を体験したことの無い国に、ドイツのアウトバーンでの時速200km以上走行のための運転規則を持ち込むようなものです。私は駐在中に何回も経験しましたが、追い越し車線を時速200kmで走行中に、はるか後方からヘッドライトを点滅させてさらに速い自動車が近づいてきます。ぼんやりしているとすぐ後ろにまで来てパッシングライトを浴びせられます。200kmの車は速やかに走行車線に戻らなければなりません。もし衝突した場合、非の半ばは避けなかった遅い車にあるとされます。実際、ポルシェやベンツは300kmの高速で走っていますから、まさに現実です。実はドイツ人の友人で自宅に招待してくれてオーガニック料理を初めて食べさせてくれた一家がいるのですが、アウトバーンを200km超で走行中に、よろよろと130km弱の低速で追い越し車線に不注意に出てきたオランダ人の車を避けられず衝突、後部座席の子供が亡くなったのです。しかし運転していた友人は重大な過失でも違反でもなく、処罰はありませんでした。また、市街地でも過失責任の規則は厳密です。日本人の子供が横断歩道の無い道路で飛び出して車にはねられ死亡したのですが、運転者はスピード違反もしておらず過失はゼロで処罰なし。飛び出した子供が過失100%ということで、亡くなった子供の親は壊れた自動車の損害も運転者への慰謝料も払わされたのです。日本ならばいずれの場合でも運転者は過失致死で処罰されますし、死亡した方が被害者となるでしょう。しかし規則に従っていて罰せられるというのでは法治社会とはいえません。この原則に厳密に従うのがドイツの契約型社会なのです。これに対し、日本の村社会では被害者がかわいそうだという思いが優先されます。なぜならみんな同族だから、いかなる理由でもその和を乱した、構成員を傷つけた側が悪いということになります。なによりも仲間内の和を大切にするのがムラ型メンタル社会なのです。

日本ではいわゆるグローバルルールではなくローカルルールが優先されてきました。スーパーマーケットの野菜売り場で、「**村のなんとかさんが作りました」と、顔写真入りで紹介されていると、つい信じて買ってしまいます。誰も調査をしておらず、農薬や化学肥料を使いまくっていてもわからないというのに!オーガニックルールを守って作りましたというより、顔の見えた方が安心するという消費者心理は村社会の感情に基づいているのです。したがって、ヨーロッパにおける歴史的な必然性と較べ、日本の場合JAS有機認証制度には合理的な意味を見出せませんでした。強いて言うならばJAS(日本農林規格)という農水省からの天下り先である特殊法人を存続させたいという勢力と、グローバルスタンダードを導入して農産物輸入自由化を滞りなく進めたいという勢力にだけは、大いに意味あることと思えてきますが…。

(続く)

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