「都市住民を取り込んだ農業再生」 に関する私的国会議員勉強会設立趣意書
国家の安全保障の根幹は食料です。現在の日本の食料自給率は40%。これは60%の国民を人質にされているということ。後継者のいない農家が耕作を放棄するたびに自給率が下がり続けていきます。食料輸入国とされる英国でさえ自給率は70%、わが国の水準は先進国として危険水位を超えています。有事に食料輸入が途絶したら、多くの国民が餓死することになるのです。さらに農地土壌は化学物質で汚染されて地味が抜けてきており、化学肥料と農薬も輸入原料や化石燃料がなければ生産できないため、国内農業生産は一層落ち込むことが予想されます。このままでは日本は存亡の危機に瀕することになります。
WTOの求める農業市場開放とは、国際競争力に劣る中山間農地を多く抱え、零細農業者の多いわが国を直撃し、農業を崩壊させ、地方経済の破綻を招き、自国内食料生産が不可能になり、国家自体が国際食料資本の意のままに翻弄される危険を意味します。そして地方経済が疲弊すると、デフレは一層深刻化します。
この国家的な難局を乗り越える際、同様な危機感を持つEUが実施している「地方発展政策」(Rural Development Policy)は、わが国にも大いに参考になります。RDPでは環境の保全、とりわけ都市消費者が求める食の安心・安全、汚染されていない土と水の確保、田園の景観維持、伝統の保持などをキーワードとして都市消費者と地方農業者を結び、国民全体で農業を守り育てようという意識を共有することにより、環境保全を掲げるオーガニック農業とオーガニック生産物流通への財政支援を正当化しています。又、同時に環境に配慮した国産農産物の高価格は当然のことと消費者に納得させることによって、農産物輸入自由化に対抗しています。
わが国でも農業危機に対処するため、EU同様の地方発展政策を導入することが急務と言えますが、そのためには国民全体、とりわけ都市消費者の支持を取り付けることが必要です。しかし、都市と地方の結びつきは掛け声だけで作れるものではありません。今日大多数の消費者は生産現場を見たことがなく、農産物が外国の大農場で作られようが、国内の農家が育てようが、同じ「価値」としか評価しないのですから、自然に「価格が安い方がよい」という選択をしがちです。食育を通じて食べ物と生産者のつながりをしっかりと知らせる必要があります。しかし一方、かなりの都市消費者は「食の安心・安全」を求めて、自家菜園を耕したり、市場に依らない生産者直接またはグループを通じて農産物を取り寄せて、高額の支出をしています。生産へと近づきたい都市住民もたくさんいます。
こうした個々人の「食の安心・安全」を願う気持ちを増幅させ、国全体の安心・安全である「持続可能な農業」へとつなぐべきです。「無関心な都市消費者」を嘆くだけでなく、積極的に「都市と地方が一緒に責任を持つ」関係を構築すればよいのです。それには都市住民にも農業関係者となって一緒に農業を支える気持ちを抱いてもらうしかありません。
そして、戦後続いてきた農家個人による農業から、都市を含めた国民社会全体が支える農業へと脱皮し、30歳-40歳代働き盛りの担い手が安心して営農できる事業環境を実現します。土壌と水の環境保全にとどまらず、将来への農業継承を推進することで、わが国の食料安全保障のレベルを高めることに貢献することを目論みます。
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