ステイホームのクリスマスディナーに黒毛和牛のビーフシチュー
コロナ疎開のため4月から外房・いすみ市の別荘で暮らしている。キョンという小鹿が出没し、庭に入り込んで草花を食べてしまうほどの山の中、晴海の超高層マンションとは180度違う世界。2~3ヶ月のつもりだったのが、感染が落ち着いたかに思うたびに第2波、第3波と押し寄せて帰れぬまま、とうとう年の瀬を迎えることになってしまった。
毎年クリスマスは外食。フレンチかチャイニーズのご馳走を食べるのが常だ。しかしここにはそんなものはない。いや、東京に居たって都知事が「ステイホーム・家族で静かに過ごして!」と呼びかける中では難しいか。
この季節、スーパーにも普段は見かけない商品が並ぶ。
肉売り場を見ると黒毛和牛のすじ肉のブロックが置かれていた。ローリエの葉っぱがおまけに付いていて、見た瞬間にクリスマスのご馳走は「ビーフシチュー」と決定した。
作ってみて気が付いたが、テレワークで外出を可能な限り控える生活には、長時間トロトロと煮込むビーフシチューが向いている。
まずは昼食の休憩時に肉を焼く
たっぷりのオリーブオイルをフライパンで熱し、すじ肉のかたまりを並べて強火で焦げ目がつくくらいに焼く。ここで砂糖を少し振りかけて、細かく切った玉ねぎを加えて一緒に炒める。
そしてコトコトと気長に煮込む
鍋に移して肉が浸るくらいの水を加え、肉のおまけのローリエの葉っぱを半分に折りちぎって入れ、黒コショウを振って煮始め、頃合いを見て赤ワインをドボドボと注ぎ入れる。このワインが味の決め手となるので、絶対にスーパーで売っている「クッキングワイン」を使ってはいけない!
どんなにいい材料を使おうと、いいワインを飲もうと、調理に使ってしまった工場製ワインから持ち込まれる「混じって欲しくない要素」が調和をぶち壊してしまうから。
黒毛和牛肉なのできれいなピノノワールがいい
ちょうどブルゴーニュのオーガニックワイン生産者シャペルさんのサントネー プルミエクリュがセラーに入っていたので、これを開けることにした。ちょっともったいない気がしないではないが、美味しいマリアージュのため妥協しない。
ランチブレークが終わり、鍋をとろ火にしたまま業務再開。
仕事に集中しても大丈夫なように、タイマーを30分でセットしておいて時々様子をみることに。
30分後に様子を見ると、美味しい香り。塩を適当に加えてそのままコトコトとさらに30分。
ここでセロリを買い忘れたことに気付き、テレワークを中断して近所の農産物直売所へ。
近所とは言え10㎞位はあるので往復で1時間弱。さすがに火は消して出た。
戻ってセロリをザクザクと切って鍋に入れて、もう一度とろ火再開。味見をすると、いったん肉が冷めて再加熱したのがよかったのか、より深みが出てきた。
そろそろ根菜類の出番
ニンジンをザク切り、玉ねぎを縦4分切り、ジャガイモを適当に切って鍋に放り込み、テレワークを再開。レストランだと見た目重視で、根菜は別に茹でて最後に添えることが多いが、テレワーク中だしそんなことは言ってられない。また1時間くらい一緒に煮込んだ方が美味しく味が染みるし、柔らかくていい。
1時間後にはどれも菜箸で切れるほどにトロトロしてきたのでバルサミコ酢を注いで味を調え、塩とコショウが足りなければ振り足す。コクがもう少し欲しかったので、バターをひとかけら放り込む。
テレワークの時間が終わり、最後の仕上げはインゲンを切ってシチューに加えて数分間待つ。
肉の消化に摂りたい酵素はグリーンサラダで
肉の消化には酵素が必要。しかし酵素は47℃以上の熱で効力を失ってしまい、シチューで肉と一緒に煮込んだ野菜類からは摂れない。だからビーフシチューを食べる時には生野菜を忘れずに添えよう。
セロリと一緒に農産物直売所で買った、地元の農家が朝収穫したグリーンレタス。鮮度が命の葉物を最高の状態で食べられるのは田舎暮らしの最大のメリットだ。
金属の包丁を使うとビタミンCが壊れるので、レタスの葉っぱを手でちぎって赤ワインビネガー、塩、オリーブオイルを振りかけて混ぜ合わせる。菜箸でもいいが、手で混ぜるのが一番早くて簡単。
2003年ヴィンテージのサントネープルミエクリュと合わせて楽しむ
シャペルさんは2004年にオーガニック認証を取得しているので、この2003年はオーガニック転換中のワイン。もちろん農薬も化学肥料も使用していないが、転換期間(3年間)が終わっていないということ。とても暑い年で、ブルゴーニュではぶどうの糖度が極めて高く、そのため通常年よりもアルコール度が少し高く、香りも深い。
このサントネープルミエクリュ2003年を使ったこともあり、黒毛和牛すじ肉のシチューとの相性はバッチリだ。もしアメリカ産やオーストラリア産の輸入牛肉を使う場合は、ブルゴーニュではなく、ボルドーやリオハの重い赤ワインか、地中海の果実味と重さを併せ持つ赤ワインを合わせたい。
柔らかく煮込んだビーフシチューは肉も野菜もスプーンで切れる。ステイホーム中だし、失敗してもお客さんに出すわけではないので、ぜひお試しあれ。
1893年創業、ブルゴーニュ・サントネー村のオーガニックワイン生産者シャペルさんの作品。
一級畑「ラコム」のぶどうのみを使用した高貴で華やかな香りのある、別格ワイン。(2003年はすでに完売)
イタリア南端・シチリアのオーガニックワイン生産者ククルーロ家の最上畑「ローゼ」で収穫したネロダヴォラ種ぶどうのみを使った、とっておきの赤ワイン。果実味と酸味のバランスがとても良く、飲みやすい仕上がり。