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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第29回】めいめい自分の言葉で

徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は違って当たり前の人間同士、適度な距離とその違いを生かし合えれば…改めて考えたいことです。[月2回更新]

■リズムは人それぞれ

 まるで台風のような暴風が吹き荒れたり、かと思ったら雲1つない快晴の心地よい日があったり。春らしく変化の激しい今日この頃です。神山町には道の駅があって、四季折々の様々な野菜が販売されていますが、この時期棚の大半を占めるのは山菜の数々。うど、わらび、たらの芽と春の里山の恵みがびっしり並びます。川にはクレソンが元気に生育し、筍のおすそ分けをありがたくいただくのもこの頃。ワカメとそれに付随するメカブや茎わかめも新物はこの時期。
 徳島の春はとても豊かです。

今年も美しく開いた山吹

 先日、あるところでテンポのことが話題になりました。テンポが同じ人たちだと気持ちよく感じたり、話が進みやすかったりする反面、テンポが速い人がいるとそれに合わせようとするという大学の研究結果もあるのだそうです。脈拍に違いがあるように、人それぞれに心地よいリズムは違います。シチュエーションや何をするかによっても違うかもしれません。食事のスピードなども違うし、乗り物のスピードも速い遅いの好き嫌いがありますね。

 もっと範囲を広げると・・・細かい作業が好きな人、ガシガシ動くのが好きな人。ピシッと揃っていないと気が済まない人もいれば、四角四面がどうにも苦手な人もいます。できる限り細部にまでこだわりたい人、とにかくスピーディに終えたい人、見た目が大事な人、中身で勝負したい人。表面には出さないけれど、熱い想いを抱えている人、あんなに盛り上がっていたように見えたけど意外とクールな人。みんなでワイワイが好きな人、ひとりで静かに過ごすのが好きな人。話をするのが得意な人、話を聞くのが得意な人。面倒見がいい人、放っておいて欲しい人にいい感じで距離を置ける人。なんでもはっきり言ってしまうけれど、言ってしまった後は後腐れなくさっぱりとした人。グッと飲み込んで、口には出さない人。踊るのが好きな人、嫌いな人。前に立つのが全く苦にならない人、逃げ出したいくらい嫌な人。考えるのが好きな人、とにかく行動するのが好きな人。
 数え上げればきりがありませんが、みんな本当に違うし、そんなひとりひとりが集まって、家族や友達、学校、会社、サークル、習い事などさまざまな集団が形成されていると思うととても豊かで興味深いことだなあと思います。

■自分にも周りにも耳を澄ます

海に来ると自分のリズムを思い出しやすくなります

 テンポが合わなくてちょっとイライラする場面も、実際違うんだから当たり前だよね、と思えたらそれからの世界の見え方は変わってくるかもしれません。その人の見聞きする世界には何が見え、聞こえているのか、何が心に引っかかったり、大きな位置を占めているのか気になったりもします。それぞれがそれぞれのメロディを独自のテンポで奏でることで創り上げられる世界もあれば、みんなが周りの音を聞きながら、リズムを揃えて生まれる世界もあるでしょう。

 ここ最近思っていることは、自分のリズムやメロディを決して殺す必要はないということ。ただ、他者のリズムやメロディもちゃんと尊重したいということ。いいセッションができたら最高の気持ちになれるし、違う世界が見えるのではないでしょうか。自分の世界が最高だからといって、周りの世界を視界から閉ざしてしまったらとても勿体無い。かといって、周りの世界に合わすことばかり考えて、自分のリズムが壊れてしまっては多分自分自身を見失ってしまうのだろうと思います。

猫は自分のリズムを崩さない天才?!

 今回のタイトルは何度読み返したかわからない、赤毛のアンのシリーズ第4巻『アンの友達』に入っているお話のことを思い出したのでそれにしました。今日の話そのものではないですが、それぞれの人にはその人に備わった最高の表現方法があり、心に響く伝わり方もまた人それぞれ違うというお話です。

 この春は多くの新しい出会いがあって、年齢や育った環境が違うのはもちろん、みんなそれぞれの人生と想いがあって生きているという当たり前のことに改めて気づかされています。

(2021.04.21)

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