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ワインの話

ナチュール シャルドネ|新着のラングドック白ワインを試す

SO2無添加のナチュールシリーズ

2021年の遅霜で壊滅的な打撃を受けたレヴォルさんは、二酸化硫黄無添加でワインを醸造する実験を始めた。それは、遅霜で生き残ったぶどうの芽から育った枝はとても健康で、少量ながらきれいなぶどうが実ったので、強い抵抗力を持っているだろうと感じ、醸造段階でもその強い生命力を試してみようと考えたからだ。

彼が採った手法は、微生物汚染や発酵が暴走することを防ぐため基本的に低温帯の醸造で、段階ごとに最適な温度管理を完全に行うことだった。さらに毎日検査に出して状態を確認し、少しでも異常が認められれば即座に調整した。

いわゆる自然派醸造家とは思考がまるで違う。そう、彼には自然派ワイン(ヴァン・ナチュール)にありがちなダレた味わいや雑菌増殖の悪臭が許せないのだ。

果たして実験は成功し、きれいに澄んだ雑味のない香りと味わいの無添加ワインが産まれた。酵母添加を行わず、土着酵母のみで発酵させたことで、ラングドックとしてはアルコール度数が控えめなのも嬉しい。

2年目の実験作 ナチュール シャルドネ

今回入って来たのは2022年のシャルドネ。レヴォルさんには2年目の実験作だ。アルコール度数は13.5%と、暑かった年なので若干高め。

キャプシルが付いておらず、コルクは剥きだし。エコロジーの視点と試作品と割り切ったとのこと。ラベルには『PAGE BLANCHE』と入っている。真っ白なページ、白紙とは、先入観を持たずに飲んで欲しいということか。

さて試飲。柑橘と梨の香りが立つ。飲み込むとほのかな桃。美味しい。邪魔なものを一切感じない。さわやかで、このままアペリティブでいくらでも飲める。

バランスが絶妙に良く、冷たいままでもいいが、少し高めの13~15℃くらいだとより美味しくなる。

ナチュール シャルドネとソーセージのポトフ

初日は「シャルドネだから」と先入観で白い肉料理を用意した。

鍋でタマネギとニンジンを水とワインで煮込み、その中に生ソーセージを放り込んで茹でた出汁に塩コショウ位で美味しくできる、お手軽ポトフだ。

かなり薄い味付けだから、ブルゴーニュのシャルドネだと味を支配してしまうところだが、このシャルドネはソーセージと根菜の柔らかい味わいを一切壊すことなく引出し、飲み込んでも喉には心地よい余韻が自然に湧き上がってくる。

絶妙のバランスで美味い。止まらない。気が付いたらボトルは半分以上空いてしまった。

ナチュール シャルドネとしらすおろし

翌日は和食に振って、前菜はしらすおろし。

大根おろしにちりめんじゃこを盛っただけの「しらすおろし」はシャルドネとは合わせにくそうだが、前日にこのワインの特徴が分かったので、濃口醤油を数滴落して繋ぎにしてみた。

実験は成功。ナチュール シャルドネは一切生臭みやえぐみを生まず、ちりめんじゃこのほのかな香りを殺さないだけでなく、いつまでも余韻を楽しませてくれた。

ナチュール シャルドネと湯豆腐

メインは湯豆腐。

土鍋に水を張り昆布を浸し、鰹節を削ってガラスの器にみりんと醤油と一緒に注ぎ、土鍋の中央に据えて火にかける。ここに葱、蓮根、人参、ぎんなん等体を温める野菜を加えて蓋をする。ぐつぐつしてきたらガラスの器を取り出して豆腐と葉物を入れて蓋をして続ける。

ナチュール シャルドネはかつお節醤油との相性が素晴らしくいい。そして豆腐を押さえつけずに味を引出してくれた。

気が付くとボトルは空になっていたが、高い満足感が残った。

ナチュール シャルドネは異次元

たしかにこんなワインは類を知らない。『白紙』で感じるしかない。

ファビアン レヴォルは、これまでのワイン界の常識を打ち砕こうとしているのだろう。アバンギャルド、いや、異次元の存在を創り出した。

好き嫌いは分かれるかもしれないが、僕は気に入った。

ナチュール シャルドネ 白

田村安

マヴィ代表
著書の「オーガニックワインの本」(春秋社刊)でグルマン・クックブック・アワード
日本書部門2004年ベストワインブック賞を受賞
フランス政府より農事功労章シュヴァリエ勲章受勲
ボルドーワイン騎士Connétablie de Guyenne

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