スパレット ビアンコ|ブルゴーニュとは一味違うトスカーナの樽仕込みシャルドネ
スパレットを開けた。トスカーナのマニョーニさんの作品で、オーク樽で仕込んだシャルドネと、タンクで仕込んだマルヴァジア ビアンカをブレンドした白ワイン。それぞれの品種の味も香りもいいところ取りした感がある。厚みがあり、油脂との相性がよく、酸味はまろやかだから、海産物ではなく肉におすすめだ。
スパレットと炒飯を合わせる
ローマで過ごしていても東京(晴海)の自宅とあまり違いのない生活をしている。まあ窓から海は見えず、見える山が丹沢や奥多摩よりもずっと近いことが違いか。カモメは同じように飛んでいる。
「家庭のガス台の火力では美味しく炒飯を作れない」という話をよく聞く。炒める温度が低いとご飯が固まってしまい、パラパラになってくれないからだという。そこで東京の家では玄米を使っている。すると炒める温度が低くても簡単にパラパラになる。
ローマのガス火力はとても弱い。玄米を炊くのは大変だと思っていたら、近所のスーパーでタイ産のバスマティ米に出会った。この米はパサパサしていて粘りを出すことができないが、炒飯ならあっという間にパラパラに仕上がってくれる。
パンチェッタ、太いポロ葱、パプリカ、ニンジン、ニンニク、ショウガを刻む。フライパンでたっぷりのオリーブオイルにパンチェッタを投げ込んで弱火で炒める。本場のパンチェッタは日本のベーコンよりも臭いがきついが、じっくり炒めると臭さが消えて発酵肉の旨さが残る。
ここに残りの材料を放り込み中火でよく炒め、柔らかくなったらみりん代用のアマロ酒、黒酢代用のバルサミコ酢を加え、醤油と好みで濃い味が好きならばチキン出汁で調味し、卵を割り込んでよく混ぜ合わせる。
我が家ではアジア食品店で干しエビを買ってストックしてあるから、これをたっぷりと放り込むとグッと中華らしくなる。そこに鍋で炊いておいたバスマティ米を加えて、弱~中火で丁寧に炒めるとパラパラの炒飯だ。塩胡椒は味見してからでよい。
肉系の炒飯には、スパレットのまろやかさと幾分かの樽っぽさがとてもよく合う。ただ海鮮系には向かないから気を付けてほしい。
スパレットと豚の生姜焼きを合わせる
二日目は赤ワインのキャンティにも合わせた、お馴染みの生姜焼きにした。特に味付けは変えていない。
豚肉は白ワインが鉄板の組み合わせでバッチリ。ただ付け合わせのトーンを落とす。さすがにオイルたっぷりでバルサミコ酢が効いたナスでは赤ワインとの繋ぎで強すぎるから、今日はパプリカ、タマネギ、ニンジンをオリーブオイルで炒め、仕上げに塩の味付けにした。
これでシャルドネの樽香と、マルヴァジア ビアンカの繊細さが邪魔されることなく豚肉と繋がって、口中がざらつかずに昇華してくれた。
ブルゴーニュ vs トスカーナ
シャルドネというとまずブルゴーニュが浮かぶ。そして「イタリアのシャルドネなんて…」と否定的に言われる方も多い。僕も昔、パリに住んでいた時代はそう思っていた。
しかしローマで暮らしてみると、パリとは比較にならない食材の種類の豊富さと質の高さに圧倒される。
そうだ、忘れていた。フランス料理が発展した理由は「食材の悪さを味付けや調理法を工夫して、常に美味しい料理に仕上げなければならない」からなのだが、イタリア料理にはそんな命題が存在せず、常に最高の食材が手に入る。だから家庭でも美味しい料理が食べられる。
ここにブルゴーニュのシャルドネが目指した味わいと、トスカーナのシャルドネが目指した味わいの差がある。それは「圧倒」と「調和」の違い。フランス料理の濃厚な味わいに対するには、圧倒的な存在感がないとバランスが難しい。
そこで僕のチョイスは、「フランス料理店に持ち込むならばシャペルさんのサントネー」、「家で飲むならマニョーニさんのスパレット」となる。
もちろん僕とみなさんはそれぞれ感覚が違うし、マヴィには美味しいシャルドネが他にもあるので、適材適所で選んでいただき、美味しいワイン生活を満喫していただきたい。
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