ワインの話
マヴィ創立25周年記念ワインの白|常識破りの凄い辛口ミュスカ
これまで記念の白ワインを造ってくれたガブリエル・タリさんの引退で、昨年は白ワインがなかったが、今年はセブリーヌ・ブーリエさんが赤・白ともに造ってくれた。
本来ならば現地に赴き、膝突き合わせて話し合うところだが、コロナ3年目というのにまだ飛べない。仕方ないので、試作品を送ってもらって試飲したら、これが素晴らしい。
品種はミュスカと聞いていたので、彼女の地域に特産の甘口に寄ったものを想像していたが、完全に裏切られた。若干の甘みの残滓は感じるものの、すっぱりと切り捨てた辛口。そしてミネラル感が半端ない。これは余人には創造し得ない技。
ルーションの降り注ぐ太陽でぶどうの糖分は高まっているだろうが、それを甘さとして残さずに使い切り、コクとキレと力強さを備えた白ワインに昇華させている。巧い!
実は記念ワインを始めた2008年、セブリーヌに白は造れないかと訊ねたのだが、ここは「白の地方ではないわ」と断られた経緯がある。今回はタリ家の廃業で、無理だろうと思いつつも聞いてみたところ、快く引き受けてくれたのだ。
セブリーヌ・ブーリエは、今やフランスの女性醸造家達を束ねる存在、「中途半端な仕事はできない」ということを、しっかりと示してくれた。
これまでガブリエル・タリが造ってくれたシャルドネとは趣が違う。だが僕の嗜好で云うと、むしろ今回のセブリーヌのミュスカは納得以上のものだ。
田村安
マヴィ代表
著書の「オーガニックワインの本」(春秋社刊)でグルマン・クックブック・アワード
日本書部門2004年ベストワインブック賞を受賞
フランス政府より農事功労章シュヴァリエ勲章受勲
ボルドーワイン騎士Connétablie de Guyenne