ボジョレーから占う、2020年は最高のヴィンテージの予感
今年のボジョレーヌーヴォーの解禁日は11月19日(木)。
2020年という世界中が新型コロナウィルスCOVID-19に翻弄された特別な年、生活は一変した苦しい年ですが、ぶどうの出来はどうだったのでしょうか?
気象からわかること
ボジョレー地方の中心地Villefranche-sur-Saone市の気象チャートで見てみましょう。
昼の暑さは?
夜の冷え込みは?
最高気温は春から初夏にかなり高く、夏は平年並みだったようです。
最低気温は春から初夏は平年並み、夏は低めだったようです。
雨は?
降水量は春から初夏は平年並み、夏はかなり少なかったようです。
歴史的に見れば理想的なヴィンテージ
ボジョレーの畑では
ヨーロッパがロックダウンされていた4月から5月の天候がよくて気温が高く、木の生育に必要な降雨も適度にあり、ぶどうの花は例年よりもかなり早く開花しました。
6月は気温が例年よりも若干低かったものの降水量も少なかったので、開花後のリスクの大きな時期ですが重大な病気が発生することはなかったはずです。
7月から8月は晴れても気温が上がり過ぎなかったので積乱雲があまり発達せず、大雨や雹がほとんど降らなかったので、若干水不足で酸より糖が乗っているかもしれませんが、許容範囲内というか、近年の温暖化で平年並みの気温が高まっているので、歴史的に見れば暑い、雨の少ない理想的な夏でしょう。
気温も降水量も急な変化の線ではなく、堅実に推移しており、ぶどうの質も量も満足な年だと推察できます。手摘みで収穫する際に、出来の悪い房を棄てて「本当にいい状態の房」だけを選りすぐれたはずです。
開花時期が早かったので収穫も早く、9月第1週でした。収穫が早いということは、醸造にゆっくり日数をかけられるということで、ワインの仕上げにはいい影響を与えます。
オーガニックボジョレーヌーヴォーを造るシュブランさん、オーガニックボジョレーヴィラージュヌーヴォーを造るランポンさんの二人は醸造作業の真っ最中。気の抜けない日々を送っています。ただ彼らの能力の高さは極めて高く、失敗することは考えられないので11月19日のボジョレー解禁日には、間違いなくおいしいボジョレーワインが届くと期待しています。
2020年ブルゴーニュは期待できそう
気象情報だけからの予想ですが、きっとボジョレーらしいきれいな酸を持ちながらも、糖も十分あるため、味わいの深いワインに仕上がるのではないでしょうか。また、そうだとすれば隣接するブルゴーニュワインもすこぶる良い年になりそうです。
新型コロナで人類の記憶に残るはずの2020年ヴィンテージ、もしかしたらウォールストリートの株価大暴落の1929年や、終戦の1945年などの偉大なヴィンテージと比較されるようになるかもしれません。
そんな2020年ヴィンテージをいち早く試せるボジョレーヌーヴォーですが、景況がまったく読めないこのご時世なので、余裕を持たせない数量での輸入となります。そこで確実に味わうには予約していただくことをお勧めします。
今年の解禁日はみんなで集まって乾杯…というのは難しそうですが、リモート飲み会などで顔を見ながらワインを飲める喜びを分かち合ってみてはいかがでしょうか。
実際の味わいは?(11/20追記)
飲んでみました!
さて予想は的中。本当に素晴らしい完璧なボジョレーに仕上がっていました。おそらく2020年のブルゴーニュは歴史的なヴィンテージになるでしょう。
糖も酸もしっかりとできていて、香りは典型的なベリー系なので、野菜(特に根菜類)から軽めの肉料理まで広く合わせられます。肉料理では豚肉や鶏肉が向いていますが、通常の年よりも少ししっかりとした味付けも大丈夫で、和牛くらいまでなら美味しく合わせられます。
オンラインイベントでボジョレー解禁を祝う
解禁日の11月19日にオンラインイベントを開催、フランスから生産者のシュブランさんやボアソー教授も参加してくれて一緒に乾杯しました。
今年は解禁パーティーではなく自宅からのリモート出席なので、イベントの後はフレンチレストラン「レザントレ コウジイガラシ オゥ レギューム」から取り寄せたグルメセットを使って、家族でボジョレーディナー。詳しくは次回をお楽しみに。
田村安
マヴィ代表
著書の「オーガニックワインの本」(春秋社刊)でグルマン・クックブック・アワード
日本書部門2004年ベストワインブック賞を受賞
フランス政府より農事功労章シュヴァリエ勲章受勲
ボルドーワイン騎士Connétablie de Guyenne