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マヴィ史

マヴィ設立以来のこと9

マヴィ史

特約店会コパン ド マヴィ2

その悩んでいる時に救いの主が現われました。
2001年、オレンジページで「心地いい暮らし」シリーズMOOKの編集長をされていた山本洋子さんと偶然に親しくなり、たびたびお目に掛かってマクロビとか玄米とか純米酒の手ほどきを受けるようになりました。私は今でも家では玄米と野菜や豆類という食事をしていますが、まったく彼女の影響です。会社設立から数年、実はかなり不健康な暮らしで、医者や整体に頻繁に通うほどの体調不良が続いていました。そこで山本さんのアドバイスで、肉や油を可能な限り抜いて、玄米と根菜や豆類中心の食生活に変えたおかげで、ワインを毎晩欠かさず飲み続けているにも関わらず、体調はすこぶるよくなり、体重も56kgに落ちて以来その水準を保っています。医食同源と言いますが、自ら体験したのは貴重なことでした。

そして彼女に「おいしい純米酒は?」と聞くと、島根に王祿という素晴らしい辛口純米酒があると紹介してくれ、池尻大橋の居酒屋「つくしの子」でぬる燗を試してみました。私はそれ以来、王祿にハマってしまい、機会ありさえすれば飲んでいるのですが、とにかく温度管理が完璧でないと王祿はとたんに劣化してしまいます。それゆえマヴィのワイン同様に問屋との取引をしておらず、滅多に飲めないのが残念なところです。そして山本さんはマヴィのワインをマクロビ食生活に合うと、とても気に入ってくれて、あちこちに紹介してくれたのですが、翌年夏に帰省される際に持ち帰り、なんと王祿酒造の石原ちあき専務に「いいワインだよ」と奨めてくれたのです。そして普段は日本酒しか飲まない石原さんもえらく気に入ってくれて、地元の特約店である松江の酒販店槙戸天狗堂さんを紹介してくれました。早速、槙戸天狗堂の槙戸孝之社長よりお手紙をいただき、やりとりを交わして10月に松江を訪問することになりました。

愉快探訪館・酒の槙戸天狗堂と名付けられたお店はそれまでの酒販店のイメージとは全く違い明るくモダンな建物で、レジカウンターには大きな生花が見事に飾られ、立派なお店です。単なる地元の酒販店ではなく、お客さんを遠くから呼べる専門店を目指したものでした。王祿、李伯などの島根の銘酒だけでなく、久保田や田酒、飛露喜などの入手困難な日本酒が冷蔵ショーケースにずらっと並んでいます。

槙戸孝之社長は昭和22年猪歳生まれ。お話しをしていく内に素晴らしく人を惹きつける魅力のある方だとわかり、すっかり意気投合し、島根県の販売をお任せすることにしました。そして槙戸さんは全国で何軒かの有力酒販店を紹介してくれ、1軒1軒連絡をしては訪ねて特約店になってもらいました。ほとんどは地酒を大切に販売する専門店です。ワインと違い蔵元と直取引で、細かい温度管理も厳しく守ることに慣れている優良店ぞろいです。これが特約店会コパンドマヴィの始まりです。

コパン ド マヴィとはフランス語でマヴィの仲間たちという意味です。オーガニックワインという、世間ではまだ認知されていないので売りにくく、温度管理に気を使わなくてはならないやっかいな商品を扱うのは酒販店にとっても大変なことです。10度台の定温設備も必要ですし、オーガニック知識も勉強してもらわないとお客様に伝えることができません。これは一般のワインを主力とする酒販店では考えられないレベルなのです。また、オーガニックワインをお客様に伝えるということは、一般ワインがどのように造られるかを知らせてしまうことになるため、これまで販売してきた、簡単に儲けが狙える商材を殺すことになってしまいます。今でこそ食品偽装事件が相次ぎ、日本の消費者もトレーサビリティーに関心を示し始めましたが、まだまだ騙すのは簡単、そのタネをわざわざ明かしてしまうような業界人はほんの一握りの先見性を持った人たちだけです。マヴィのオーガニックワインを販売する特約店会コパンドマヴィ入会資格とは、まさにこの「一握り」の気概と能力を持っている経営者だということです。

コパンドマヴィでは全国大会を開催、オーガニックワインを取り巻く状況や、いかにお客様へお伝えすべきかなどを勉強し、他の仲間がいかに導入していったかなどの事例を交換し合ったりしています。また、毎年生産者を訪ねる研修旅行を実施して、ぶどう畑とその素晴らしい環境、醸造の様子、ワイン産み出す文化背景なども学んでいます。ただ一番大事なことは、生産者たちの生の姿に触れて彼らと直接話し合うことでしょう。そこで得られる感動こそがしっかりとお客様にお伝えする原動力になっているのです。

こうした努力は経済的には大きな投資です。問屋から仕入れてただ並べて売るだけという、受身の商売とは全く違います。単なる商売人ではなく、自ら惚れ込んだ「本物を伝える商人」であることを誇りとしていなければできません。コパンドマヴィメンバーはまだ40軒ほどで、少しずつしか増えません。流行ってきたから、単にオーガニックワインを並べてみようと思って取引依頼をされる酒販店はだいぶ増えているのですが、マヴィの特約店基準に達していないお店がほとんどなのです。書類審査、実地訪問してのお話し合いをしてみると、何も考えておられない方や、気持ちはあってもそれだけの力が備わっていない方が圧倒的に多いことにびっくりしてしまいます。やはり酒販免許制度で護送船団方式が長く続いたことで、これまで考えることはしなくても商売ができたというのが問題なのでしょう。

これは酒販店に限ったことではなく、農業も金融業も土建業も日本の内需に関わる業種はいずれも同じ問題を抱えています。物とサービスとお金の国境が崩れていく今日、アンシャンレジームが末期の悲鳴をあげているかのようです。国家の役割も変わり、横並び一線を支える仕組みはすでに破綻しています。黒船から明治維新で幕藩体制が崩壊し、「天は自ら助くる者を助く」世の中になった時、価値観が急激に変化する中で自分のアイデンティティーをいかにして発揮できるかが問われているのだと思います。

(続く)

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