農地証券化及び営農株式法人による地方活性化の概要
平成18 年4 月
1. 日本農業の将来ビジョン
・地方農村地域の活性化
・国産食糧の確保と自給率向上による食糧安全保障の確立
・国民に支持され購買される、安心で持続可能な国内農業環境の確保
・都市住民の農村地域の自然とのふれあいによる憩いの確保
2.ビジョン達成の方法
都市住民(国民)を「農地証券」や「営農法人株式」を媒介にステークホルダー(利
害関係者)として農村に関連付け、農業の担い手を従来の個人から社会へと移行させ
ていくことで国内農業の振興と持続を図る。
3.農地証券とは
自治体が農地土壌汚染除去と環境農業化に賛同する農民の所有農地の土壌改良権
を担保として発行する証券。対象農地を環境保全型のものに限定することで、都市住
民(国民)の農村活動への理解と協力を得ると同時に、国産農産物への購買意欲を持
続、向上させる。
4.営農法人株式とは
証券化された土地を賃借して営農に従事する営農株式法人が発行する株式。当該株
式を都市住民(国民)が購入することで、土壌改良後の営農にかかる資金を支えると
同時に、都市住民(国民)が農業経営に参加することで、経営ノウハウや消費者ニー
ズの提供を図る。また、農村に経営資金が入ることで、農業の生産性向上や雇用の発
生などの効果も期待される。
5.農地証券及び営農株式に係る国の責務
国民が農地証券及び営農株式を購入することは、本来国家の責務である「持続可能
な社会の実現」、「国産農産物の振興による食糧安全保障」に協力することであり、こ
れに係る国家支出を軽減し、地方経済振興にも利するので、国はあらゆる面で農地証
券及び営農株式について支援・優遇措置を図ることとする。
(1) 支援措置
・農地証券に係る土壌改良基金の創設(詳細、下記7.(2) )
・農地証券に係る農地の保護
→国は、担保農地が自然災害に遭った場合の復旧を証券発行者に義務付けるが、
復旧費用は国が負担し、証券所有者には損失を課さない。
(2) 農地証券、営農株式に係る優遇措置
農地証券、営農株式は譲渡可能。取引税・贈与税の対象外とする。
→制度の目的上、相続などによって農地面積を減らすことはあってはならない。
6.農地証券発行と流通のプロセスの概要
農地証券の発行主体は自治体とする。自治体は、管轄の農地証券発行を希望する農
家の農地について、土壌改良基金の融資の基に土壌改良を行い、証券格付機関から土
壌改良度合いに応じて証券格付を受けた上で、農地証券取引市場を通じて都市住民
(国民)に農地証券を販売する。
(注)登記簿上の農地所有者は現有農家で変更はない。
7.農地証券発行と流通のプロセスの説明
(1)農地証券発行の条件
【1】 証券発行を受けられる農家は、農業による水質汚染、土壌劣化等を食い止め、
地力と生態系を回復し持続可能な社会に貢献する者に限る。
【2】農地証券発行の担保には環境保全型農業に適する土壌改良された農地のみが対象
となる。土壌改良の資金は土壌改良基金が融資する。
【3】「土壌改良された農地」とは土壌に残留する農薬・化学肥料などの化学物質
を次の方法で除去した環境保全型農業に適する農地であり下記のものを指す。
A.JAS 有機認証基準を満たしている場合。
B.土壌を(30cm)以上掘削して表土層を除去して、原野等の土壌または施
設にて土壌改良処理を施した土壌に入れ替えた場合。
(2)土壌改良基金の創設
国は自治体に対して汚染土壌改良を行う際に必要な資金を貸し出す目的で基
金を創設する。基金は、下記の点に留意しつつ活動を行う。
【1】事業対象農地の土壌改良権を融資担保とする。
【2】貸し出した資金は無利子として、証券販売によって得た資金が返済に充てら
れる。
【3】土壌改良事業を実行できなくなった場合は即時返済とする。
【4】返済できない場合は担保農地を没収する。
(3) 農地格付機関の創設
各農地の土壌改良度合いに応じて、農地の格付を行う機関を創設する。基金は、
下記の点に留意しつつ活動を行う。
【1】土壌改良の度合いを判定し3 ランク程度に格付を行う。
【2】各県に機関を設置、その上に全国組織を設けて格付の差異が生じないよう
に監査する。
【3】評価ランクに応じて証券担保の価値を決める。
【4】評価ランクが上がれば証券の追加発行を可能にする。
(4) 農地証券・営農株式取引市場
農地証券・営農株式市場機構を非営利目的で創設する。
【1】農地証券発行者は全てこの市場に登録する義務がある。
【2】取引窓口は全国の都市、地方にネットワークを持つ既存の金融機関を利用
する。
【3】短期保有を禁止する。(投機目的による影響を防ぐため)
【4】農地証券を抵当、担保とすることを禁ずる。
8.農地証券所有者の権利
証券所有者は、下記のメリットを享受すると同時に、農村社会の一員として農村の
活性化を担う。
【1】 毎年の地代を農産物で受け取る。
【2】自治体の準構成員としての地位を得る。
(祭等への参加も含む)
【3】農地視察時の安価な宿泊提供を受けられる。
(食育活動、子供合宿等も含む)
【4】農業活動に係る年次報告を受けられる。
9.営農株式法人の概要
証券化された土地を賃借して営農に従事する法人。当該法人が発行する営農株式を
都市住民(国民)が購入することで、土壌改良後の営農にかかる資金を支える。
【1】一般の株式会社ではなく、農地証券・農業株式市場への登録を条件とする。
【2】営農方法は継続的に環境汚染を発生させない農業に限る。
→証券化された農地の農業目的外の使用は認めない。
10.営農株式法人評価機構の創設
株式取引の円滑化のため、経営を評価し、株式購入者への客観的な情報を提供する。
【1】 株式所有割合の制限が必要。
【2】 各法人には財務内容の公表を義務付ける。