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コラム

マヴィ創立26周年に思う

コラム

1998年

マヴィ創立を目前に控えた1998年2月、フランスワイン界の重鎮・ボアソー先生より「Millesime Bio(ミレジムビオ)というオーガニックワイン展示会が開催される」との知らせをもらい、何の準備もなく南仏モンペリエに飛んだ。

オーガニックワイン専門インポーターを創立しようというのに、その時までたった2軒の生産者としか接触できてなかったのだから、恥ずかしいくらいの能天気だ。しかし当時は本当にオーガニックワインというものが知られていなかった。

小さな体育館のような会場には50軒程の農家がテーブルを並べており、ボアソー先生と一緒に全テーブルを回って試飲して選んだのがタリ家、カバニス家、デュテールデラロッシュ家、ヨン家、ドウェル家の5軒だった。ここに既知のラバスガザーニ家とミュッソ家の7軒がマヴィ創業時の生産者さんになった。

この7軒のうち、5軒は廃業、1軒は代替わりで取引終了となり、残るはドウェル家のみとなったが、これが26年の歳月というものか。

2024年

長く続いたコロナ禍がようやく収束し、今年こそはと、1月末に開催されたミレジムビオに行って来た。出展者千軒を超える大きな展示会場にマヴィの生産者さんは10軒、久闊を叙することになったのだが、顔触れがずいぶん若い。

コロナ禍の数年の間に当主が亡くなった家も多く、息子さんや娘さんにお悔やみを告げるのは寂しくつらかったし、残った僕と同年代の親たちには3日間の展示会でブースに立つのはずいぶんつらい。ただ、そこにドウェル家の当主アランが変わらずにいてくれるのはありがたい。

ドウェル家の畑はギリシア時代、フランスにワイン造りがもたらされた頃から続く、おそらくフランスでも最も恵まれたぶどう畑。掘れば女神像や壺が出土する。醸造所の基礎はローマ時代のもの。庭の泉の水はローマ時代から枯れたことがない。そして有史以来、ここでは一度も農薬や化学肥料は使われたことがない。

雨が少ない土地で、アランのワインは年によって生産量が上下するが、どんな年でも変わらず美味しい。これは稀有なことだが、土地の力と生産者の技のレベルが並外れたものだからだろう。

あらためて思ったのだが、マヴィもドウェル家のようでありたい。

創業27年目に入り、世界平和の不安定と経済環境の激変で経営は厳しい。しかしオーガニックワインのパイオニアとしての矜恃を持って、素晴らしい生産者に恵まれているマヴィを、しっかりと守り続けていきたい。

アラン ド ウェル作品

コート ド プロヴァンスロゼ

自信を持って言えるのは…
このプロヴァンス以上のロゼには出会ったことがないこと。

ロゼということを度外視しても素晴らしい完成度のワインだ。

田村安

マヴィ代表
著書の「オーガニックワインの本」(春秋社刊)でグルマン・クックブック・アワード
日本書部門2004年ベストワインブック賞を受賞
フランス政府より農事功労章シュヴァリエ勲章受勲
ボルドーワイン騎士Connétablie de Guyenne

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