【特別公開】オーガニックワイン講座ボジョレー地方編
2021年9月24日に開催したオンライン講座「オーガニックワイン講座ボジョレー地方編」の内容をダイジェストでお届けいたします。
【解説動画】ボジョレーワインの醸造(講師:田村安)
1時間の講座を11分に短縮しました。 (※動画を再生すると音が出ます)
ボジョレー地方について
ボジョレー地方は、フランス中南部のリヨン市の北から、ブルゴーニュ地方のマコン市までのソーヌ川に沿った南北50㎞、東西10㎞程の比較的小さなエリアです。
11月第3木曜日に解禁というボジョレーヌーヴォーで世界的に有名なワイン産地なのですが、意外とどんなワインなのかは知られていないようです。そこでこの講座では具体的に説明させていただこうと思います。
ボジョレーの畑面積
ボジョレー全体の畑面積は22,500haでワインの平均生産量は1億3500万リットルです。ワイン生産者数は3,600農家でそのうちオーガニック農家は約200軒ほど。
フランス全体の畑面積約900,000haやボルドーの畑面積約120,000haから比較するとボジョレー地方の畑面積は規模が小さいことがわかります。
ボジョレーの土壌
北部:片岩質、花崗岩質
南部 : 石灰質、粘土石灰質
北部の片岩質や花崗岩質は水がはけやすく小粒の実になりやすく、ボジョレーヴィラージュ、クリュ・ボジョレーと呼ばれる熟成タイプのワイン用のぶどうの栽培に向いており、一方南部の石灰質や年度石灰質は保水しやすく果汁の多い大粒の実になりやすいいためフレッシュなボジョレーヌーヴォー用のぶどうの栽培に向いています。
ボジョレーの地勢と気候
ブルゴーニュ地方とコートデュローヌ地方の中間に位置し温暖です。北から南に流れるソーヌ川がリヨンでアルプスからの冷たいローヌ川と合流する前のため、気温と湿度の調整役となっています。
また西側の高い丘陵は冷たく高湿度となる西風を遮断してくれます。太陽の照射度合も日照量もぶどう栽培に十分です。日中の気温はブルゴーニュよりも高くなり、ぶどうの果実味を高めてくれます。
ボジョレーの品種
ボジョレーを代表する品種はガメイです。ブルゴーニュ地方に隣接しており、ピノノワールやシャルドネも少量ですが生産されています。
ボジョレーヌーヴォーのぶどうはすべて手摘みで収穫します。
ボジョレーワインの醸造
赤ワインの醸造では収穫したぶどうは破砕してタンクに入れて、皮に棲む酵素が果汁の糖分を分解してアルコール発酵を行います。
しかしボジョレー地方の醸造方法は特殊で、収穫されたぶどうは破砕せずに房のままタンクに入れて、まずタンクの中で果汁に果皮を浸すマセラシオン(浸漬抽出)を行います。マセラシオンによって果皮から赤い色素のアントシアニンと渋いタンニン、種子からもタンニンといったポリフェノール類が抽出されます。
このマセラシオンの後にぶどうを圧搾して果汁とし、アルコール発酵を続けます。
ボジョレーヌーヴォーのマセラシオンには3つの方法がありますが、マヴィの生産者はぶどうが発酵することで自然に発生する二酸化炭素を用いる「マセラシオン セミ カルボニック」を採用しています。
マセラシオン セミ カルボニック
伝統的製法:マヴィの生産者達が採用している方法
蓋をしたタンクの中に積み上げた房のままのぶどうが自身の重みで潰れ、果皮に棲む酵母に触れて発酵することによって自然に発生した二酸化炭素でマセラシオンを行う色の抽出に5~7日間もかかる上に、自然にまかせるため安定が難しく、造り手の技量が問われるが、土地の味わいを余すことなく引き出せる製法。
マセラシオン カルボニック
速成製法:ボジョレーでは一般的な方法
蓋をしたタンクの中にボンベで二酸化炭素を注入し、マセラシオンを行う。高濃度のガスの働きで自然発酵による二酸化炭素濃度の上昇を待たずに、2~3日間で失敗なく色が抽出される。
マセラシオン ア ショー
超速成製法:工場での大量生産の際に用いられる方法
ショー(chaud)=熱。ぶどうに60℃の熱を加えて一気に色を抽出する。30分程度で抽出できるが、酵母などの微生物はなくなる。
牛乳等で用いられる低温殺菌法(パストリゼーション)と同じ条件の熱で殺菌されるため状態の悪い果実も使用でき、時間短縮と共に大幅なコスト削減を実現したが、土地の味わいは消えてしまう。
マセラシオンで赤い色を抽出した後、圧搾した液体を発酵させるという製法はロゼワインの製法とほぼ同じです。このため、ボジョレーワインは一般的な赤ワインよりも色が淡く、タンニンが少ないという特徴があります。
濃い赤ワイン好きという人が「ボジョレーは嫌い」というのは、求める味が違うからで、当然のことでしょう。ボジョレーはブルゴーニュやボルドーのように強い料理に合わせるのではなく、優しい料理と合わせてこそ真価が発揮できます。
ボジョレーに合うレシピ
ボジョレーワインの歴史
ボジョレー地方はフランス第二の都市リヨンに隣接し、首都のパリからも近いので、都市住民の日常ワインとして親しまれてきました。
ガメイから造られるボジョレーワインは軽い飲み口のため、合わせる料理が濃くなくてもよいため、熟成を待たずに飲む日常ワインに向いていますが、北部のヴィラージュ地区やクリュ地区の熟成用高級ワインに比べると格落ちのワインと思われていました。
ところが1970年代に、ボジョレーの大手ワインメーカーがボジョレーワインの早飲みに向く特徴を逆手に取って「その年に飲めるワイン」として大々的なマーケティングを行い、大成功します。
ボジョレー委員会が解禁日を定め、それより早い日に発売することを禁止しました。
そして緯度の関係でとりわけ日付が変わるのが早い日本では、「世界一早く飲める場所」として、成田空港で到着したてのヌーヴォーを飲むなど1980年代に大きな盛り上がりを見せました。
しかしボジョレーヌーヴォーの人気が高まると同時に、ブームによって悪影響も起こります。
早さを競うあまり、速成製法のワインが出回り、安さばかりを売りにした大量生産品が市場を締め、いつしか「ボジョレーヌーヴォーはまずい」というイメージがついてしまったのです。
また2012年にEUが制定したオーガニックワイン醸造規定で「パストリゼーション」が認められたため、今日では大手メーカーもオーガニックボジョレーヌーヴォーを製造しています。
マヴィのボジョレーヌーヴォーは大手メーカーとは違い、より厳格に作られています。そんなマヴィのボジョレーヌーヴォーをぜひお楽しみください。
マヴィのボジョレーワイン生産者
マヴィではボジョレー地区南西端のシュブラン家とクリュ・ボジョレーのレニエ村のランポン家の2軒のオーガニック生産者の作品を紹介しています。
2024年オーガニックボジョレーヌーヴォー早期予約受付中
10/31(月)まで早割特別価格!