ロゼワインの魅力
私たちが「ワイン」という言葉を聞くと、まず思い浮かぶのが赤ワインや白ワイン、それからスパークリングワインもあったなと思い出すことでしょう。ですが、最初にロゼワインを思い浮かべる人は少ないのではないでしょうか。
ロゼワインは、どんなぶどうを使い、どのように造られ、世界でどのように受け入れられているのか、メジャーな赤ワインや白ワインに比べるとまだまだ知名度は低いかもしれません。
一見脇役のような存在ですが、実は世界全体でアルコール飲料の消費量が右肩下がりになっている中、少しずつ伸びているのが他でもないロゼワインなのです。
またワインの歴史を振り返ってみると、意外にも人類が最初に飲んだワインは赤ワインと白ワインを混ぜたもの、つまりロゼワインだった可能性が高いという研究もあるそうです。
今回は魅力がいっぱいのロゼワインについて掘り下げていきたいと思います。
ロゼワインの醸造方法
ロゼワインは初め、赤ぶどうと白ぶどうを混ぜて発酵させただけのものでした。現代では技術も発達し、ロゼワインの醸造方法も増えていきました。
基本的にロゼワインは赤ワイン用のぶどうから造られますが、その色合いからもわかるように、ロゼワインに含まれる色素やポリフェノール量は赤ワインと比べて少ないのが特徴です。
ロゼワインの醸造方法は5つあります。
- プレス (Pressurage) による製造方法
- セニエ (Saignee) による製造方法
- マセラシオン・カルボニックによる醸造方法
- 混醸法
- 赤ワインと白ワインのブレンドによる醸造方法
プレス (Pressurage) による製造方法
赤ワイン用のぶどうを白ワインの様にプレス機に入れて直接圧縮して醸造する方法です。本来、ぶどうの皮は果汁の中に浸されて色素が移っていきますが、この方法ですとプレス機の中で圧搾されながら行われます。
この方法ではワインの仕上がりはプレス時の圧力や時間によって大きく影響されます。また、色素だけでなくポリフェノールも絞りだされます。
プレス機内の果皮・果実の塊を頻繁に崩して圧搾をすると、今度はロゼワインで好まれる必要量以上の色素やタンニンが抽出されてしまい、綺麗な色合いや味わいをしたロゼワインにならないことがあるので、プレス機によるロゼワイン造りは一発勝負とも言えるでしょう。
セニエ (Saignee) による製造方法
こちらの方法は赤ワインの方法に似ており、プレスして抽出する方法に比べ、より濃色で凝縮されたロゼワインとなります。
「セニエ」という言葉は、フランス語で「血抜き」という意味で中世ヨーロッパ時代に行われていた治療法に由来します。体内に貯まった老廃物を血と一緒に抜き取る治療と言われていました。そこから転じて、赤ワインを造る過程の途中で果汁だけを少し抜き取るためこのように呼ばれるようになりました。
除梗して粉砕したぶどうを、タンク内で5時間から長い時では36時間ほどマセラシオン(浸漬)させます。そこから色が付き過ぎる前に果汁を抜く作業(セニエ)をします。抜き取る果汁の量は一部であったり、全部であったり生産者が望むワインによって変わります。
果汁を全部抜き取り、ロゼワインだけを造ることもできますし、一部だけを抜いて少量のロゼワインを造って、残りは赤ワインとして造ることも可能です。
また、色やポリフェノールと言った成分の抽出量はマセラシオンの時間や温度などによって異なってきます。色やポリフェノールの抽出は、圧搾よりもセニエによる製法の方が多くなるのが一般的です。
マセラシオン・カルボニックによる醸造方法
マセラシオン・カルボニックは浸漬の際にタンクに二酸化炭素を充満させて色を抽出する方法です。
ボジョレー地方の新酒の製造方法として広く知られています。マセラシオン・カルボニックは(ボジョレーヌーヴォーの特徴である軽やかな味わいからもわかるように)色を引き出す量が少ないことから、ロゼワインの醸造法として用いられることもあります。
混醸法
赤ワイン用の黒ぶどうと白ワイン用の白ぶどうを同じタンクに入れ、浸漬して造る製法です。
赤ワインと白ワインのブレンドによる醸造方法
この製法もブレンドをすることがポイントですが、混醸法と違う点は赤ワインと白ワインをそれぞれ醸造した後に、ブレンドする方法です。
このブレンド方法は良質なロゼワインが造れないということで、EU圏内では禁じられています。しかし歴史的な地方文化継承という背景を持つポルトガルの一部と、フランス・シャンパーニュ地方のスパークリングワインの一部では例外として認められています。
ロゼワインの消費が伸びている理由
ワインに限らずアルコール飲料の消費が社会全体で低迷している中、ロゼワインの消費率は長期的に見て増加し続けているという珍しいタイプのワインです。
過去5年でワイン消費量が2%も下がっている中、ロゼワインだけが13%も増えています。今日、ワイン全体の消費量のうち、1割を超える割合でロゼワインが飲まれるようになりました。言い換えれば、10本のワインがあるうち、1本はロゼワインということです。
世界中の人を魅了しているロゼワインですが、調べてみると人気の理由がいくつか見えてきました。
ロゼは幅広く料理に合わせやすい
ロゼワインは、他のタイプのワインでは合わせにくい料理にも寄り添いやすいのもポイントです。この料理との相性の良さは、ロゼが赤と白の中間であることに依っています。
フランス料理のコースで白から赤に移るというような、フォーカスの強いマリアージュを狙うのではなく、どちらの料理とも反発しないという特性です。
フランスでも中華料理ではロゼが選ばれやすいことや、ロゼの和食との相性の良さに通じますが、どこかにフォーカスを当てないから、卓上にいろいろな皿が同時に並ぶ際に最強のパーフォマンスを発揮できるのです。
辛いスパイスを多く使った中華料理、ピザなどの具材を問わないファストフード、シンプルに単体のフルーツにも合わせられます。
ロゼは味わいのバリエーションが広い
ロゼワインは味わいのバリエーションが広く、料理に合わせやすいワインとして大変人気です。
ロゼワインには辛口タイプのものから始まり、甘口やスパークリングワインまで様々なタイプがあります。
更に同じ辛口でもライトな口当たり、重めな口当たり、フレッシュな口当たりなどと選択肢が広いのも魅力的です。
特にマヴィで取り扱っているロゼワインはどれもアロマが特徴的なものが多く、柑橘類が効いたフレッシュなアロマなものがあったり、落ち着いた果実味を楽しめるものもあったりと合わせる料理のバリエーションが一気に広がります
ロゼはポップな印象でインスタ映えにもってこい
ロゼワインをよく飲む年齢層は元々比較的若いというデータがあるのですが、Y世代が特にロゼワインを飲む傾向にあります。
1980年代初頭から1995年前後に生まれた世代はインターネットと共に育ってきた世代でもあり、飲酒が許される年齢からSNSも普及し始めました。インスタグラムなどのプラットフォームで自分たちのアクティビティをシェアし始めたのがY世代です。
ロゼワインは、赤ワインや白ワインが真似できない綺麗なピンクやサーモンといった色合いを持っており、ワインだけでも綺麗な被写体になります。そこに食べ物や一緒にいる仲間に合わせてロゼワインと一緒に映れば間違いなく「インスタ映え」します。
ロゼは安定した価格で高いパフォーマンスを誇る
ロゼワインのもう一つの最大の魅力は、何と言ってもコストパフォーマンスが高い点にあります。
他のタイプのワインですと安いものは極端に安いですし、高いものは信じられない程高いワインが多く出回っています。その点多くのロゼワインは一定の価格で出回っており、飛びぬけて高いものは殆どありません。
その理由は、ロゼワインの製造にかける時間が比較的短いためです。
醸造方法の項で書いた通り、プレス機にかける場合は1回で短時間の圧搾をしなければなりません。セニエ法でも5時間~36時間のマセラシオン(色素抽出)をして発酵プロセスへ進めるので、比較的短期間で作業が終わります。
また、ロゼの命はきれいな淡い色ですが、この色は長期間置くと褐色に変化してしまいます。そこでロゼは樽やタンクで長期熟成は行わず、新鮮なうちにビン詰めして出荷されます。
つまりロゼは市場に出るまでの時間が赤ワインや白ワインに較べて短い商品なのです。そのため、生産者側も熟成にかかるコストを考慮する必要がありません。
しかし、コストが抑えられたと言ってもワイン造りにかける拘りや情熱も抑えられたという訳ではありません。他のワインと同じように全力で造られますから、品質や味わいは相変わらず高いクオリティであることには間違いありません。
プロヴァンスはロゼワインのメッカ
ロゼワインで有名な地域と言えば南仏プロヴァンスです。
ちなみになぜプロヴァンスのロゼワインが有名かというと、ワイン文化伝達の歴史が関わってきます。
フランスにワイン文化が広まるずっと前、紀元前6世紀頃の話です。
エーゲ海東部のギリシア都市国家・フォカイア人が、ギリシャからぶどうの木を南仏プロヴァンスのマッサリア(現在のマルセイユ)に持ち込みました。彼らが造ったワインは、白ぶどうと黒ぶどうを混ぜて造ったもので、その淡い心地よいピンク色は地中海社会全域で話題になりました。
後にローマ人が上陸しますが、マッサリアで人気になっているピンクワインのことは既に知っており、当時の発達した交易ネットワークを駆使して地中海中に瞬く間に広めていきました。
その結果、2600年経った今日でも、「ロゼワインといえば南仏」というイメージが続いています。
ロゼは夏の風物詩
プロヴァンス地方や、地中海辺のレストランでは、夏の日差しと海の青、ロゼワインのピンク色が定番の光景です。そのため「夏はロゼワイン」というイメージが強く、サマーシーズンはロゼワインを楽しむ人が多くなるのではないでしょうか。
太陽や海、パラソル、氷を入れたバケツに冷やしたロゼワイン、ロゼのグラスに氷を浮かべたり、インスタ映えもして夏を連想させる光景です。
夏にはぜひ、屋外でロゼワインを楽しんでみてください。
ロゼはカクテルにも使える
ロゼワインは単体としてはもちろん、カクテルの材料としても活用することができます。綺麗なピンク色とアロマのバリエーションの広さがポイントです。
グレープフルーツを使った「ロゼ・パンプルムース」はフランスで人気があるカクテルで、ロゼワインをシャーベット状にした「フローズン・ロゼ」はニューヨークで流行った飲み方です。
ロゼワインの色合い、味わいをベースにカクテルを作るという発想は世界中にあり、もし飲み残してしまったときもカクテルとして最後まで楽しめるのも、ロゼワインの消費が伸び続けている理由かもしれません。
まとめると、ロゼワインの消費が伸びているのは価格を抑えながらも、万人受けする美味しさで、どの料理にも合い、お洒落な演出が出来て、夏の風物詩で、ワインとしてもカクテルとしても楽しめる万能なワインなのです!
マヴィのロゼワインをピックアップ!
シチリア地場品種「ネロ ダヴォラ」のロゼワイン
「ネロ ダヴォラ」という品種をご存じでしょうか。カベルネソーヴィニヨンやピノノワールなどに比べると耳にする機会は少ないかと思います。
このぶどうはイタリア・シチリア州の土着品種です。
外観の特徴は、果房が中程度の大きさで円筒の形をしており、密着しています。皮がそこそこ厚く、皮の表面は青白いです。
このぶどうは別名「Calabrese」と呼ばれています。
Calabreseの語源はシチリア方言の「Calaurisi」。Calaはぶどう、AurisはシチリアのAvola地区のぶどうの意味となります。「Nero d’Avola」の後半部分に当たるAvolaで、この辺りから発見された黒(Nero)ぶどうの品種で「ネロ ダヴォラ」と呼ばれるようになりました。
一時はフィロキセラの影響によって栽培生産量が大きく減ってしまいましたが、今ではシチリアの代表品種と呼べるまでに復活しています。
「ネロ ダヴォラ」はポリフェノールが多く、アルコールが強くなるため主にブレンド用に使用され、イタリア国内ではトスカーナ、ピエモンテ、イタリア国外では産地呼称統制以前のブルゴーニュ、ボルドーでも使用されており、「Le Vin Medicine」(薬効ワイン)と呼ばれるほどでした。
この「ネロ ダヴォラ」を使ったシチリア・ククルーロ家のロゼワインをご紹介したいと思います。
ククルーロ家のネロダヴォラは標高480メートルのところに位置する粘土質の土壌で栽培されています。
収穫は手摘みで行われ、茎から実だけを取り除いた後は低温浸漬を行います。その後、やさしく絞った果汁をステンレスタンクに移します。ぶどうの皮に付着した天然酵母がアルコール発酵を始め、美しいピンク色のワインが出来上がります。
出来上がったワインからはイチゴやラズベリーなどの果実にスミレが入ったブーケのフローラルな香りがして、上品に広がる味わいには、優しい酸味やほのかなタンニン、可愛らしい果実味を感じます。
コティ ロゼは、ネロダヴォラ種100%のロゼワインで、透明感と力強さを兼ね備え、広くいろいろな料理に合わせやすい辛口ワインです。
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ロゼワインと相性の良い食材やマリアージュ紹介
ロゼワインと合わせたい料理や食材は沢山ありますが、ここでは3パターンをピックアップいたします!
ロゼをスターターを合わせる
目で楽しむロゼワインと合わせるポイントは、食材も色を合わせることです。
綺麗なサーモン色や綺麗なピンクの色合いを持ったロゼワインには、同じく明るいピンクやオレンジの色合いを持った食材をカラフルに揃えるのがオススメです。
フィンガーフードとして、エビを使った料理はいかがでしょうか?
シンプルに茹でたエビにお好みの調味料を付けるのもいいですし、川エビを素揚げにしたおつまみもおすすめです。エビ以外でも、基本的に生の新鮮な甲殻類とロゼワインはよく合います。
やや甘い口当たりのロゼワインであれば、味わいをワインに寄せて甘辛なたれを使った生春巻きなども良いでしょう。生春巻きに含まれるエビを始めとした食材本来の美味しさや甘辛なタレが、やや甘いロゼとピッタリ決まります。
ロゼをメインディッシュと合わせる
ロゼと同じ色合いの魚料理を合わせてみましょう。
鮭のムニエルには、ロゼワインのきれいな酸味と果実味で調和させてマリアージュを楽しむのもおすすめです。レモンスライスを添えると、料理からワインまでの酸の味わいの繋がりがよりスムーズになります。
ロゼに合わせる肉料理でしたらミートボールのトマト煮がオススメです。
ミートボールが持つ適度な脂身と旨みは、ロゼワインに含まれる少量のタンニンによってコクを増します。またトマトの酸味とフルーティさは、ロゼ自体の酸味や果実味ともマッチしてよく調和した味わいを楽しめます。
お好みで鶏肉や牛肉に変えたり、トマトソースで煮込んでもロゼとは美味しくマリアージュしてくれます。
ロゼをデザートと合わせる
ロゼワインはデザートにも合う優れものです。特に果物を使うとロゼワインのフルーティがより引き立つマリアージュになります。
おすすめは素材の味わいをシンプルに楽しめるフルーツポンチ。元々フルーツポンチはワインなどのアルコール飲料の中に小さく切ったフルーツを入れて食べられていたものでした。ロゼワインから香るアロマを元に果物を選べば、そのワインにピッタリとしたスペシャルなフルーツポンチの完成です。
また、ドライな口当たりのロゼワインにはイチゴを使ったクレープもおすすめです。こちらもロゼが持つ香りに合わせて中に入れる果物やクリームなどをアレンジすれば、自分だけの特別なマリアージュが楽しめるでしょう。
前菜からデザートまで幅広いお料理と楽しめるロゼワイン。 ぜひ様々なマリアージュにチャレンジしてみてください。