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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第52回】三度目の春

徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は土と本腰を入れ関わり始めてから3年。更に強く感じられるようになった季節の変化、自然の声、それらを生かして農作業をすすめることについて。イタリアピエモンテ州から届く、気楽でのん気な赤ワインがすすむ、ふんわりチーズスフレのご紹介も![月2回更新]

■改めて、自然の循環から春を感じる3年目

日中は作業をしていたら汗ばむ日もあるほど、世の中は突然一気に春になりました。今年は三寒四温を感じるような、暖かい日が続いて雨が降って、ちょっと寒くなって、また暖かい日が続いて、というサイクルがなくて地面が乾いている印象。山から水を引いている友人の中には渇水の話をしている人もいて、今年もまたこの一年の田畑のことに思いを巡らす季節がやってきました。

近所のお花の苗屋さんの美しい花

本格的に土を触り出して、3年目の春を迎えました。一斉に花がほころんできた今年だから余計なのかもしれませんが、「去年もこんなところにこんな花があったっけ?」と毎日のように通っている場所なのに驚きを隠せません。一斉に咲きそろった感はあるものの、それでも樹々の芽は明らかに毎日少しずつ膨らんできていて、緑の多様な草も早いのから順に少しずつ地面を覆うようになってきていて、日々小さな変化を見つけては季節の移ろいを確かめています。「桜が咲く前から、神山中がうっすらとピンクの靄に包まれたように感じる」とこの連載の最初の方(第2話)でも書いていたのですが、開花する前から樹が日1日と準備を進めているのですから、当然といえば当然のことだったわけで。「神山中が淡いピンクの靄に覆われている」ように思われたのは、イメージではなくて現実だったんですね。

草花だけではなく、虫や動物も動き始めます。鶯がいい声で鳴き、小鳥の歌声がたくさん聴こえるようになりました。夜になると近所の猫がまるで小さな子供が泣いているような声で求愛するのもこの時期だし、つい先日は蛇第1号を発見。(しかもマムシよりも毒が強いと言われるヤマカガシで二重にびっくり!)まるで小鳥が大集合しているような、大勢が笑っているような不思議な声を発するカエルの大合唱も2月の半ばすぎから。小さな虫たちが空中を飛び回り、鶏たちも俄然、脚を使って地中を熱心に掘る動作が増えてきました。暑さに敏感な動物たちは毛が抜け始めて、ちょっとボサッとした感じになっています。

新しく仲間入りしたおちびさんたちもずいぶん大きくなりました。

人間は春・夏の野菜を考えて、土を耕したり、種をまいたり、苗を作り出したり。いつもお世話になっているお花の苗を育てておられるご夫妻は見事に開き始めたカラフルなお花の出荷にお忙しい模様。たくさん育てている大根が、葉っぱがついたままだと一気に花になっていくので、慌てて葉っぱを切り落として、地面からニョキニョキ大根が突き出ている不思議な光景を目にするのもこの時期。(「大根いっぱいあるよ、いらない?」と各所からお声がけいただけるありがたい時期でもあります)私たちも冬の間稲藁で覆っていた畑に少しずつ、じゃがいもや野菜の苗を植えたり、これから育っていく種をまく準備を始めています。冬が始まる直前に植えたニンニクとたまねぎは、春の兆しが見えた頃から日に日に元気になり、成長を始めていて嬉しい限りです。

神山町に来て、聞くようになったのが「お地神さん(おじじんさん)」という言葉。まさに土地・土・農業の神様のことで、各所に石塚があって祀られています。春と秋の2回の社日、それぞれ春分と秋分の手前の戊の日がそれに当たるのですが、その日は神様が土に訪れるからということで、農作業をしてはいけないと言われています。春は豊年を願って、かつては神社に種をお供えして儀式も行っていたそう。
年に2回、農作業をお休みして、春は今年も頑張ろうと決意を新たにし、秋は今年もありがとうと天候や田畑に感謝して、節目節目に思いを新たにしていたんだろうなと想像します。そんな風習が今も残っていて、教えてくれる人たちがいて、大切なことは守られていくんですね。

■「のん気」な赤ワインとチーズスフレで乾杯

冬の終わり、春の始まりに用意したのは、イタリアピエモンテの赤。アーモンドの花のラベルでお馴染みのマンドルロは桜が開花するまであと少し待つことにして、今回はバルベーラ ダスティ サンパンセを。サンパンセは、輸入を決めた時からその名前が「気楽な、のん気」などを意味すると教えてもらって、それまでロヴェロ家で取り扱ってきた高貴で気高いロウヴェやグスティンとは違って(それはそれでもちろん大好きなんですけど)、とても親しみを感じた1本でした。

バルベーラダスティのもつ強さから、どうしても特別な日のイメージが大きかったのですが、サンパンセは日常の食事で開けたくなる軽やかさも備えていて、いろんな料理と合わせやすいワインの1つです。そんなこともあって、今回はチーズスフレと合わせてみました。

1月の終わりにやってきた小さな子たちが初卵を産みました。これはパンケーキを作っている時の写真

「チーズスフレ」と聞くと、レストランの料理!?みたいに思われるかもしれませんが、フランスだと「夜ごはんの準備しないといけないけど、時間ないわねえ、どうしよう、あ、あれにしよう!」というような感じでパパッと作れるのに、ボリュームもあるし、ちょっと華やかになるし、子供も喜ぶし、というお役立ちメニューだったりします。

作り方は、濃いめのホワイトソースを作り、そこに卵黄を加えてよく混ぜます。さらにたっぷりのチーズ(シュレッドチーズでも粉チーズでもOK。塩分は加減してください)を加えて混ぜておきます。別に分けた卵白は塩少々を加えてしっかりとしたメレンゲにして、先ほどのミックスに加え、泡を壊さないように、でも全体に混ざるように混ぜ合わせます。個別に分けても良いし、まとめて大きな型に入れてもOK。180℃のオーブンで、大きさに応じて10〜20分ほど焼き、全体が膨れて焼き色がついたらできあがり。オーブンから出すとすぐに萎んでいくので、オーブンから出したらすぐに熱々を召し上がれ。チーズの他にほうれん草やにんじんなど、ピュレ状にしたいろんな野菜を入れても色がきれいで、味わいも変わっておすすめです。

ふんわり美味しそうに焼きあがりました~

(2022.03.23)

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