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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第41回】自分の輪郭を知る

徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回はたまには自分自身と向き合い、分析することでみえてくる「やりたい事」や「やるべき事」そしてそれを続けることで思いがけない縁につながるというお話です。何かやってみる時のヒントになるかもしれません。転がっているチャンスとの出会いは必然?![月2回更新]

■誕生日に1年間を振り返る「遊び」

日中はまだまだ暑さも残っていますが、朝晩グッと冷え込むようになった神山です。

9月とともにすだちの収穫が終わり、秋の味覚の栗の渋皮煮を作ったり、道の駅の棚には柿、いちじくやあけびが並び、大根の間引き菜も見かけるようになりました。なすはもうそろそろ終わり、畑には白菜やキャベツ、ブロッコリーの苗、にんにくを植えました。また1つ季節が移り変わろうとしています。

あと1ヶ月もするとこれがきれいに色づきますね(photo by C.N.)

以前、何かの折にもお話ししたことがあるかもしれませんが、フランスの山の家に通っていたある夏をきっかけに、年の初めや(年の終わりの時もある)、誕生日付近で1年の振り返りをするようになりました。きっかけは17歳も年下の、当時オーストリアのそれはユニークな高校を卒業したばかりの、国籍はドイツ人の女の子。その夏は彼女と一緒に山の家のキッチンで働いていて、彼女が高校生の時に体験したさまざまな面白い授業の話をよく聞かせてもらっていました。一緒に誕生日になる瞬間を迎えようと、私の誕生日前日の夜に部屋に来ていた彼女が「よし、あれやろう」という感じで、突然質問を始めたのです。

  • 去年1年間のハイライトは何?嬉しかったこと、楽しかったこと、10個言ってみて。
  • じゃあ悲しかったこと、辛かったこと、悔しかったことは?同じく10個。
  • 最後にこれからの1年間でやりたいことは何?10個挙げてみて。

これは思いのほか、面白い体験で、今では自分の中では恒例行事の1つになってきたけれど、最初はなかなかのインパクトでした。まず、ハイライトと思えることは次々と浮かぶのだけれど、辛かったことや嫌だったことというのはそんなに浮かばず。毎年のことですが、10個に満たないことがほとんどです。その日の夜はただそれを挙げていって、彼女にこんなことがあった、あんなことがあったと話して、最後にはプレゼントまで用意してくれていて、素敵なバースデーナイトで終わりました。その後、この振り返りは少しずつ進化して、嬉しかったこと、嫌だったことの内容を分析したり、自分の傾向を掴んだりもしています。
しばらくはずっと一人でやっていましたが、最近は年始に友人と一緒にやったり、一度神山町に来てから、ワークショップ形式で関心のある人にお伝えしたこともあります。

2005年フランスにて

その毎年やっている年始の振り返りで、昨年(2020年)1月に「今年やってみたいこと」に挙げたことの1つが、「これまで学んだことを還元していく(そのスタートを切る年にする)」というものでした。前年の2019年に50歳を迎えていた私は、もう人生とっくに折り返してるのだから、自分が学ぶことも大事だけれど、これまで自分が得てきたことを周りにもっと意識的に還元していかないと、と思い立ったのです。
子育てをしているわけでもなく、フリーランスのような形で過ごしている今は、部下など育成する人たちを抱えているわけでもないので、その部分を意識したいなと。もちろん自分のできることなどしれているのも承知ですし、仕事や日常生活を通じて自然とやっていることもあるとは思いつつ、そういう心持ちで日々を過ごそうという小さな決意でした。

今も昔もこういうことは好きらしい(2021年)

■自分が心動くこと、嬉しいことに向き合う

過去に何度かそういう体験があるのですが、こんな風に書き出したことも、だんだんと毎日の意識にのぼらなくなって、ひどい時は次の振り返りの時に「ああ、こんなこと書いたなあ」なんて、その瞬間まで忘れていることさえもあります。それでも、よくよく考えてみるとその想いを実現させてくれるようなできごとが次々と降り注いでいたりするのです。これが巷で言われる「引き寄せの法則」みたいなものなのかもしれませんが、現実になっていることが多いようによく感じます。

例えば、このコラム。
私が日々感じていることを綴らせてもらっているわけですが、この連載がスタートしたのが昨年3月でした。自分なりの発見や、大切に感じていることを伝える媒体を手に入れたわけです。昨年末には、今春からの寮のお仕事の話と、下宿する高校生を預かるという話が浮上してきました。まさに、子育て経験がなかった私が突然、高校生たちとの真剣勝負の場に駆り出されることになったのです。ここには、山の家〜マヴィ〜オニヴァで培った農業や料理の経験、オーガニックなライフスタイルとその考え方、イベントなどを企画して回していくことなど、ありとあらゆる力を総動員しています。
同じく、昨年ふとしたきっかけから始めたとある会社でのアルバイトは、オンラインでの単純作業のはずが、あれよあれよという間にマネジメント的な役割を一部担うことになり、組織で勤務した経験が少ない人のサポートにも回ったりと、マヴィやその前の職場で働いていた時に身につけた数々の経験や知識、仕事の仕方、考え方などを必要な人に伝授しているような気がします。

友人の新米を土鍋で炊いていただきましたーツヤツヤで美味しそう!

こんな風に、普段は意識していなくても、一度意識にのぼらせたことは、宇宙がそのチャンスをこれでもかと投げてくれるように思うことが増えました。もっと翻訳にも力を入れていこう、と宣言したらそういう話がポツポツ舞い込んできたり。こういうことやっていきたいな、と思ったことが結構目の前に現れます。驚くくらいに。みなさんにもきっと同じような経験があるのではないでしょうか。

だとすれば、折に触れ、自分のやりたいこと、自分が心動かされたり、嬉しい、楽しいと感じることが一体何なのかということをきちんと時間をとって考えてみるのは、思いを実現する大きな近道なのではないかなと思うのです。
不思議ですが、意識にのぼっているときは意外と実現しなくて、忘れてしまっていたり、ふと何気なく思い出すと「あれ、叶ってる!」ということが多いような気がしています。
もちろん思い描いたことを自ら計画立て、ガリガリと進めていくことで欲しいもの、なりたい自分を手に入れていく人から見れば「何言ってるんだ?」と感じるような提案かもしれません。ただ、いろんな事情があって、なかなか動けないんだという人も、まずは「自分」の輪郭をくっきりさせることから初めてみるのはどうでしょう。
何に喜びを感じるのか、何に対して悲しく思うのか。どんなことにワクワクするのか。それを知るだけでも、そういう環境に身を置いていくようになっていくし、神様か宇宙かわからないけれど、そんな何か大きな存在が「よしわかった」とでもいうように、あれこれチャンスを与えてくれるようになります。それを受け取るかどうか、気づけるかどうかは自分次第だったりするのですが…

稲刈り間近!黄金色がまぶしいです。

(2021.10.13)

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