【第11回】あ、やっとさー、あ、やっとやっと
徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」
徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は、もう誰もがご存知「阿波踊り」についてのお話。[月2回更新]
■いよいよ夏本番!
5月の終わりに梅雨に入った四国はようやく7月の終わりになって、梅雨明けを迎えることになりました。最初は空梅雨?という感じでしたが、後半は水害を引き起こすほどの大量かつ長雨。8月はどんな空模様が待ち受けているのでしょうか。
徳島県にとって、8月は特別な月。阿波踊りがあるからです。
近頃では高円寺の阿波踊りも有名になってきたので、関東でもよくご存知の方がおられると思いますが、「お盆のお祭りでしょ?」と思ったら大間違い。この特別な盛り上がりや熱気により、徳島中が独特の空気に包まれます。人口25万人あまりの徳島市に4日間で120万人を超える人が訪れ、市内に宿が取れなかった観光客が神山に宿泊するなどということも例年のこと。
激しい雨で後半の2日が中止になってしまった昨年に続き、今年もコロナウイルスの関係で中止が決定し、今年の8月はなんとも寂しい、夏が夏でないような気持ちになります。調べてみると400年の歴史のあるこの阿波踊り、4日間の全行程が中止になるのは戦後初なのではと言われています。
阿波踊りを踊るチームを「連」と呼びますが、徳島市の阿波踊りには850を超える連が踊りに来るそうです。各連には通常、女踊り、男踊り、それぞれの踊り手がいて、小さな子供たちや中高生がそれぞれ別枠の踊りを担っていることもあります。さらに鳴り物といって楽器を担当する人たちもいて、鉦(かね)、篠笛、締め太鼓、大太鼓、三味線などが主な楽器で、連の規模によって楽器の数や踊り手の構成も様々ですが、こうした役割の人たちが1つの連を成しています。
各連がそれぞれ違った色やデザインの衣装を着て街を練り歩き、踊る様は、見ているだけでも十分ワクワクするし、とてもエキサイティングです。
■神山町の連のひとつ「桜花連」
連にもいろいろあって、阿波踊り会館で、連日交代で踊りを披露するプロフェッショナルとも言える有名連をはじめ、地元連、学生が作る大学連、企業連、仲間たちで立ち上げる連とさまざま。そして神山町には、町を代表する連が1つあって、桜が有名な神山らしく「桜花連(おうかれん)」という名前で毎年私たちを楽しませてくれています。
今や阿波踊り本番の8月12日〜15日の4日間を徳島市内で踊り続ける連がほとんどの中、神山町の桜花連は阿波踊りの本来の目的、ご先祖様をお迎えし供養するため、最初の2日間は町内中の各所を周り、ずっと踊り続けます。町が第一の踊りなのです。最後の1日は桜花連も徳島市内に繰り出し、演舞場や辻々で踊りを披露しています。
あの暑さの中、一日中踊り続け、演奏し続けるので皆さんの体力は本当にすごいと思いますが、年によって構成が変わったり、4日間のうちにも変化が見られて、毎年楽しみです。衣装を身につけると普段見知っている方たちばかりのはずなのに、雰囲気が変わって、その姿が見られるのもとても良いものです。
毎年8月30日に開かれる焼山寺(お遍路さんが巡る四国88ヶ所の第12番のお寺、第12番焼山寺は神山町、そこから神山町内を通って第13番大日寺へと向かうことになります)のおこもり法要。桜花連の阿波踊りの夏の締めくくりであり、夏の終わりを告げる行事です。
桜花連の踊りの披露の後は、その場にいる人も輪の中に一緒に入って踊る「輪踊り」が繰り広げられ、最後に花火が打ちあがって終了。この花火、これまでのどんな打ち上げ花火より間近で観られるので、すごい迫力です。こちらも楽しみにしている年中行事の1つ。
夏本番が始まったばかりなのに、夏の終わりを想像してしまいました。今年はこうした行事もないのかと思うと寂しいばかりですが、別の楽しみを見つけていきたいと思います。皆さんの故郷のお盆はどんな風に過ごされますか?
帰省がしづらい方も多いかもしれませんが、こんな時こそ故郷に想いを馳せたくなりますね。
(2020.08.05)