【第9回】よく働き、よく遊ぶ
徳島・神山町で人気の「カフェ オニヴァ」長谷川浩代シェフの連載
徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。 自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は、「遊び」も神山流?生活と密着したアクティビティについて[月2回更新]
■天気と相談しながら作業の日々
新月と金環日食とが重なることで騒がれていた夏至も過ぎ去り、あっという間に7月になりました。蒸し蒸しした日々が続いていた今年の梅雨もここに来て毎日降り続き、九州などでは心配な事態になっています。植物にとっては恵みの雨ですが、各地が無事であることを祈るばかりです。そんな中、夏野菜の筆頭であるトマトもすくすく育ち、色づいてきました。夏本番ももう目前です。
田畑に関わっていると1日があっという間に過ぎていきます。マヴィの農家さんたちと話していた時もいつも感じていたことですが、農業に携わる人は休みなんてないなあとつくづく思います。
ひとつには天気や植物の成長に合わせて作業が変わるため、ある程度予測しながら進めるとはいえ、会社勤めのように固定の曜日で休むことは物理的に不可能だからです。さらに言えば、お天気の日はもちろん作業日和ですが、雨が降る日も機械や道具を手入れしたり、ハウスや軒先でできる作業をしたり。
季節ごとに実る野菜や果物が次々と出てくるので、日常の作業に加え、梅酒や梅干を漬けたり、金柑を煮たり、栗の渋皮煮を作ったりといった加工業務も年中行事に組み込まれています。
春にはその合間にお茶摘みや茶の加工も。最近は自宅で作る人は少ないようですが、かつては阿波晩茶という夏に発酵させて作る独特の晩茶作りもありました。夏野菜が実り始める頃には秋や冬に食べる野菜の苗立てなんかも始まります。その間には雨と太陽の力ですぐに伸びてくる草刈りも欠かせません。田んぼや畑に現れる鹿や猪がなんとか入ってこないように対策をしたり、支えをしたり、カバーをしたり、土を寄せたり、追肥をしたり。いつでも良い土を保つために堆肥を準備しておくこともとても大切です。自分自身で「今日はストップ!」と歯止めをかけないと、やることはいくらでもあるのです。
■でも、「遊び」も欠かせません
それなのに、神山の皆様は本当にアクティブ。その少しの合間をぬって釣りに行ったり(徳島県って、日本全国の中でも本当に目立たない県で種々のランキングでもちょっと寂しい結果になることが多いのですが、実は海も山も川も楽しめて、太陽も存分にあって、美味しいものもたくさんある、素晴らしい県なのですよ!)、スポーツしたり、楽器を習ったり、サークル活動したりと、「どこにその体力と時間があるのですか?」と驚くほどじっとしておられません。
それもわざわざ何処かに習いに行くとかではなくて、野球やバレー、三味線や琴、野草研究会、近隣を美しく保つための集まり等、町民によるクラブ(サークル)活動的なものが実に盛んなのです。
そういえばボアソーさんの住むモントー村もそうした活動がとても盛んで、いろんな集まりがあるよと話してくれたことを思い出します。
今年は残念ながら中止が決定となりましたが、そうした活動の中でもちょっと特別で規模が大きなものが桜花連という阿波踊りの連で、神山町唯一の連になります。4歳くらいの小さな子供から大人まで、踊りだけではなく太鼓や篠笛といった楽器を担当する人まで総勢60名くらいが活動しており、移住して神山町民になった人たちもたくさん参加しています。また阿波踊りについては改めて紹介する機会をもちたいと思いますが、徳島中が熱くなるとても特別なお祭りで、私も毎年楽しみにしています。
行こうと決めたらすぐに驚くほどきれいな海、山、川に遊びに行けるこの土地柄も影響しているのか、オンとオフの切り替えがうまく、遊び上手で知識も豊富な人が多いです。特に神山町民の方が子供だった頃の遊びの話を聞いていたら、本当に楽しそう。フランスの山の家で働いていた頃、こんな場所でバカンスを過ごした思い出のある子供たちが心から羨ましいといつも思っていましたが、神山町で子供時代を過ごした人たちの記憶もとても素敵。その子供たちが大人になるから皆さんこんなに面白い方々ばかりなんだなあと感じます。
私たちも少しずつ、泳ぐならこのポイントがいいよとか、桜を見るならここだよとか、ビーチはあそことか、ちょっとずつですがとっておきの場所や遊びが増えてきました。今年の夏も存分に楽しみたいなと思っています。
(2020.07.08)
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