【第4回】思い浮かべる、心を寄せる
徳島・神山町で人気の「カフェ オニヴァ」長谷川浩代シェフの連載
徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…これから定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は、“商品”の作り手を思い描ける喜びと、ぶどうジュースを使った簡単料理をご紹介。[月2回更新]
■オニヴァにも生産者からのメールが
桜が散ったと思ったら続いて新緑がどんどん美しくなってきました。冬の間あんなに枯れてしまう落葉樹の枝から、見事に青々とした緑が芽吹くのを目にすると一体どこにこのパワーが隠されているのだろう?と不思議な気持ちになります。
各地で非常事態宣言が発令され、どこにお住いの皆さんもきっと落ち着かない日々だと思います。そんな中、先日ベリュウさんの奥様のアンヌさんからメッセージが届きました。2017年にカフェオニヴァのスタッフ全員でベリュウさんのお宅を訪れ、数日滞在させてもらったのです。
「随分長い間連絡がないけれど、みんな元気なことと思います。
(Facebookで)料理の写真を見たわよ。美味しそうだったわ。
日本は自由に外出できるのかしら?レストランは営業しているのかしら?
あなたたちが大変な状況でなければ良いけれどと思っています。
ここフランスでは、みんな家にじっとしていなければなりません。
私たちは畑とカーブで働いているわよ。作業は何もかも前倒しなの、すでに暑いから。
ぶどう畑の春の写真をいくつか送るわね。ソラマメを撒いたのよ。
濃い緑の帯の部分がそれよ。
心を込めて アンヌ」
このメッセージとともに、私の頭の中にはいくつもの風景が蘇ってきました。
お庭のテラスでいただいた瑞々しいサラダとブランケット。
炎天下で頑張ったパリサージュ(←風通しを良くしたり、光を当てるために下や横に伸びた枝を持ちあげる作業)。
オーガニックで認められているものでさえ、農薬的なものは一切使いたくないベリュウさんが新たに手がけている品種のこと。
皆で飲んで食べて語り合って大笑いした温かで豊かなテーブル。
■今日もあの人が手掛けた何かをいただく
マヴィにいた間も、神山町に来てカフェオニヴァを始めてからも、生産者さんたちが身近です。今は近隣でオーガニックのお野菜を作ってくださる方々といつでも交流できるし畑にも行けます。 また先日は、神山町ではないけれど育て方にこだわっている養豚場の見学に行って、お話しすることができました。(注:新型コロナウイルスの騒ぎが起きる前の話です) コーヒー豆はすぐ斜め向かいで焙煎してくれる人がいるし、ケーキやお惣菜を作ってくれる人、天然染料で染物をしてくれる人、洋服を作ったり、直したりしてくれる人、足型からフルオーダーで靴を仕立ててくれる人までいます。
木を育てて、切り出して、製材してくれる人、家を建ててくれる人、ビールを醸造する人、パンを作る人、紅茶や野草茶を作っている人も。石屋さんに陶芸家、木工作家さん、デザイナーなど今ざっと思いついただけでもみんな顔もお人柄も仕事場も浮かんでくる人たちです。
本当はどんな物も様々な人の手を介して私の元に来ているのだから、同じくらい大事にしないといけないのだけど、知っている人が手がけたものは自ずと特別な意味を持つようになります。
マヴィのワインを飲んでおられる皆さんも、きっとただワインを飲んでいるという方は少ないのではないかと思います。サイトで写真も見ているから造り手さんの顔もわかるし、訪問記などで畑や醸造所の様子、家族のことなんかも思い浮かべて飲まれることもあるでしょう。
■ぶどうジュースの思い出
ある時、シャトー ド ルーのセヴリーヌさんが近隣の幼稚園や小学校に入ったばかりの子どもを受け入れて、収穫を体験した後自分の手で絞ったぶどうジュースを飲むというイベントをした時のことを話してくれました。
「これをすることでね、彼らにとっては、もうぶどうジュースは単なるパックやビンに入ったものではなくて、どんな風にできているか知っている特別なものになるのよ。」と。
セヴリーヌさんの畑ではまだぶどうジュースは飲んだことがありませんが、ドウェルさんやブリアールさんなど、収穫時期に訪れたカーブでは発酵前、発酵途中など色々なぶどうジュースを飲みました。
私が在籍していた頃は商品としてなかったぶどうジュースが今はあるんですね!しかもイタリア、サンジョヴェーゼのジュース。
私は訪れたことがないドメーヌですが、訪問記を読んで興味津々になっています。今は大変なイタリアだけど大丈夫かしら?次回ヨーロッパを訪れる機会があればぜひ行ってみたいなあと。
写真で見た風景と面白い経歴をお持ちの造り手のマニョーニさんを思いながら飲んでみました。ワイン用のぶどうって、発酵してアルコールを作らないといけないのでしっかり甘いんですよね。
■甘さを生かしてフルーツソースに!
炭酸で割ってレモンを浮かべたり、赤ワインと果物でサングリアももちろん良いけれど、この甘みを生かしてお料理にも使えそうだなと思いました。
油を敷いたフライパンで、塩胡椒で下味をつけた豚肉を焼いた後、肉を取り出し(アルミホイルで包んで保温しておいて)、みじん切りにしたたまねぎと好みでにんにくを少々加えてよく炒めます。
そこにこのジュースとビネガーを2:1の割合で加え、煮詰めながら、塩胡椒で味を整えます。お皿にお肉を盛り付けて、このソースをかけてどうぞ!
ぶどうが旬の時期には、生のぶどうも少し加えるとより本格的に。甘酸っぱいソースで、豚肉以外にも鴨肉や鹿肉などとの相性も良いですよ。ビネガーの代わりに粒マスタードを使うのもお勧めです。
酢豚の隠し味にこのぶどうジュースを使ったり、生姜焼きなんかにも良さそう。ドレッシングに少し混ぜたり、お野菜のマリネに使ったり、ちょっと煮詰めてシロップを作って、パンケーキやヨーグルトにかけても美味しそう。たくさん果物があるときは、一口大にカットして、最後にこのジュースで和えてミントを加えればたちまち素敵なフルーツサラダのできあがり。ブルーチーズやウォッシュチーズと合わせるときはぜひストレートでチビチビと。ジュースでありながら、天然の風味豊かな調味料としても大活躍しそうなので、家庭でのお料理や食卓でぜひ使ってみてくださいね。
※マヴィにはワイン以外にもこのとびきり甘くて美味しいぶどうジュースの他、厳選された調味料もご用意しています。ぜひチェックしてみてくださいね。ワインとの同梱大歓迎です♪