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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第1回】プロローグ:おいでなして、神山へ

徳島・神山町で人気の「カフェ オニヴァ」のシェフの新連載がスタート!

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…これから定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。記念すべき初回のスタートです。[月2回更新]

■あっという間の6年半…四季を贅沢に味わえる町

 世界のオーガニックにまつわる情報を日本に届け、ヨーロッパのオーガニックワイン農家さんと日本でそれを待ち望むお客様とをつなぐ仕事。そんなマヴィでの12年余りの生活ののち、徳島県の自然豊かな町、神山町に住まいを移したのは2013年の夏。あっという間に6年半が経過しました。

 神山町は鮎喰川(あくいがわ)を中心に広がる谷あいの町で、東西に長く、面積173.3平方キロメートルの実に86%が山林です。日本の滝100選にも選ばれている雨乞の滝を始め、大小の美しい滝があり、そこから流れ出る水を集めた鮎喰川は、えも言われぬような美しい青。その水の美しさは、神山町の景色を形作る大きな要素の1つです 。

雨乞いの滝、日本の滝100選のひとつ

 冬から春になる今頃から、神山町は一気に彩りを増します。神山町の特産物の1つ、梅の花が咲き始めると…ついで桃、そして県内外から多くの人が訪れる見事な枝垂れ桜の波。その周りではミツマタ、モクレンやレンギョウなども咲き誇り、棚田には菜の花が一斉に開花して、春の神山はどこを訪れても美しい。誰もが思わず車を停めて写真を撮り、不意に速度を緩めてしまうため注意が必要になるほどです。

春の棚田・枝垂れ桜も見えます

 夏は川遊びや、子供たちにはカブトムシやクワガタ捕り。打ち上げ花火が見られるお祭りも町内の各所で行われます。夏の終わりを迎えると神山一の名産「すだち」の収穫で町は大忙しになります。かれこれ今年で22年目を迎えるアーティストインレジデンスのアーティストさんたちが3ヶ月の滞在をスタートするのも8月の終わり。阿波踊りが終わると朝夕の気配も変わり、夏から秋に移りゆくのだと実感します。

緑がまぶしい元気なすだち

 すだちとともに、秋は栗、柿、無花果などの果樹もたくさん実ります。私たちのレストランでも通常の業務に加え、加工品を作るのに忙しくなる時期です。慣れないうちは、次々と運ばれてくる自然の恵みに作業が追いついていかなくて焦ることも多々あったけれど、今では年中行事としてすっかり定着してきました。

ワインにもぴったり?ジューシーな無花果

 冬は農閑期で、杉や檜の人工林が多数を占める神山町では、木の伐採の季節。木が冬の寒さから身を守るため、樹液を下ろし、春にまた新たに芽吹くために水分や養分を吸い上げるまでの時期が林業家の皆さんの勝負の時期です。(ぶどうの剪定と同じですね。)できるだけ水分量が少ない時期に伐採することで、のちに材として使用される際のカビや腐敗を防ぐのです。星空がたまらなく綺麗なのもこの季節。年を通して神山ではたくさんの星が見えますが、冬は群を抜いています。

■この先の暮らしが続いてゆく為に

 世界中のオーガニック情報を集めて、世の中の動きを追う日々も楽しかったけれど、季節の移り変わりはもちろん、日々刻々と姿を変える自然の情景を毎日自分の目で、肌で感じ、共に過ごしていけるこちらでの暮らしはまた格別です。長く過ごした南フランスの「山の家」での暮らしで体感した、大きな大きな循環の中に自分がいることを、ここでの暮らしも教えてくれます。

 そんな素晴らしい神山町に住む人々の日常、そしてこの町の良さをこれからもずっと残していくために取り組まれている様々な活動。とても静かな山あいのこの町で繰り広げられているダイナミックで面白い動きについては、また次回以降に。もちろんカフェ オニヴァでの美味しい食材とワインのお話もお楽しみに!

鮎喰川の美しい青色がいつまでも続く為に…

※タイトルの「おいでなして」は阿波弁で「ようこそ、いらっしゃいませ」の意。神山へようこそ、いらっしゃいませ神山へ。

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