65歳の誕生日はオゥ レギュームのフレンチで愉しむ
3月18日、65歳の誕生日を迎えた。
コロナ後初フレンチ
コロナが猛威を振るっていた昨年は西伊豆の旅館「いさば」の部屋食で祝ったが、今年はオミクロンがようやく収束してきているのでフランス料理を楽しもうと、レザントレ コウジイガラシ オゥ レギュームさんに電話を入れた。
誰もが同じことを考えるようで、誕生日当日は満席。幸い、翌19日ならば大丈夫とのことで、まあ誰かを招く訳でもなく妻と二人だけの食事だし、1日遅れの誕生会としよう。
オゥ レギュームさんの料理はその日の食材で決まるので、前日の18日、マダムの美香さんから3月19日のメニューが届いた。
前菜 は4種からチョイスできる。
- 新玉ねぎのブラマンジェ
- 鰯と野菜のテリーヌ
- エチュベ
- 蜜柑猪のパテ
魚料理は1種類でサーモンのホワイトアスパラ添え
メインの肉料理も4種から選べる。
- 岩手短角牛ハンバーグ
- 仙台和牛スネ赤ワイン煮
- 合鴨ロースト
- トリッパ
そして的矢の牡蠣があるから、アミューズにいかがですか?と嬉しいエキストラチョイスも。
持ち込ませてもらうワインはブリアールさんのシャンパン3年熟成と、シャペルさんのシャサーニュ・モンラッシュ白2020年と決めた。いずれもプルミエクリュだ。
「おや、肉のメインに白ワインは大丈夫か?」と不審に思われる方も多いだろうが、それほど心配することでもない。五十嵐シェフならばなんとかしてくれるだろう。
アミューズの前に牡蠣
まずはコースのアミューズブッシュの前に特注の一品、日本語だと「付け出し」か。志摩半島・的矢湾の牡蠣だ。今年は赤潮で全滅に近い被害だったので、生き延びたものも小粒だという。
シャンパンでいただこうとしたら、美香さんがシャサーニュ モンラッシュも開けて、グラスを並べてくれた。
五十嵐さんはパリ風にエシャロットビネガーを添えている。「カキにはシャブリ」というが、このソースがなければ生牡蠣にブルゴーニュの白は絶対に合わない。ただ同じブルゴーニュのシャルドネでも、もっと南の産地でしかもプルミエクリュだし、どうかなとは思ったが、較べてみることにした。
もちろんシャンパンはソースがなくてもよく合う。牡蠣の後味をスパッと断ち切ってくれるから、アミューズブッシュには最適。
一方シャサーニュ モンラッシュは力強くて、ソースなしでは厳しい。ソースが加わると繋ぎができて美味しくなるが、牡蠣の後味をそのまま切らずに残してしまうため、好みが分かれるところだろう。僕はシャンパンに軍配を上げる。
アミューズブッシュのキッシュ
キッシュはシャンパーニュからもブルゴーニュからも近いロレーヌ地方が発祥の料理で、どちらのワインとも相性がいい。
まずはシャンパンで合わせてみたら、キッシュの脂を切ってくれるのでサクッといける。無難に美味しい。
次にシャサーニュ モンラッシュ。ほっこりしたキッシュを包み込んでくれて、ぐっと引き上げてきた。これも美味い。
前菜に猪のパテ
蜜柑猪とはみかんを与えて育てたイノシシだという。ジビエではなく癖はない。
シャンパンともシャサーニュ モンラッシュとも相性はいい。樽熟成のシャルドネには王道の前菜だ。
魚料理はサーモン
魚料理のサーモンのホワイトアスパラ添えは、フキノトウのフリットとうるいが目を引く春の山菜料理の風情だ。シャンパンのボトルが終わってしまったので、これはシャサーニュ モンラッシュだけになったが、シャルドネのコクと揚げ物のバランスがよく、絶品の相性。
肉のメインはトリッパ
トリッパは牛の胃袋、日本語だと「ハチノス」。ホルモンなので、ちょっと臭みがありそうなイメージだが、五十嵐シェフは完全な下ごしらえをしてくれているので、全く気にならない。載せられた菜の花の緑と芽キャベツの黄緑が、春の色合いを演出している。
気になる肉料理とシャサーニュ モンラッシュとの相性だが、シャルドネ樽熟成の力強さでねじ伏せる訳ではなく、ふわりと見事に調和してしまった。これはまさにパーフェクトと言えた。
デザート
BYOを成功させるには
ここまで見事にマリアージュが成功したのには理由がある。
大事なのは持ち込むワインを事前に伝えることだ。腕と勘のいいシェフは味のベクトルを、どうすればそのワインの方向に向けられるかを考えて、しっかりと合わせてくれる。
そして何よりシェフとの信頼関係。レザントレ コウジイガラシ オゥ レギュームの五十嵐さんとは18年来の仲。僕の好みを完全に把握してくれているから、本当に安心していられる。
田村安
マヴィ代表
著書の「オーガニックワインの本」(春秋社刊)でグルマン・クックブック・アワード
日本書部門2004年ベストワインブック賞を受賞
フランス政府より農事功労章シュヴァリエ勲章受勲
ボルドーワイン騎士Connétablie de Guyenne