ワインの味について考える:意識して楽しむ
楽しいことも、つらい事も「意識」をすることでより一層強く感じます。今回は私たちがどう味を認識しているか、考えてみましょう。
脳が情報を処理する
私たち人間が物を食べたり、液体を飲んだりする時に、私たちの脳は想像以上に多くの情報を得ています。
視覚からだけでなく、嗅覚、味覚、触覚、聴覚からたくさんの情報を食べ物、飲み物から得ているのです。(私が出会ったソムリエの中で、スパークリングワインの泡の音を聞くだけでその状態が良く分かるという人に会いましたが、その真実は定かではありません。)
日本ではワインがなかなか浸透していないと言われていますが、「ワインをどう理解し、情報を得ればいいのかわからない」ということが一つの理由ではないかと思います。
でもグラスに注がれたワインを見て、眉をひそめ考え込む必要は一切ありません。
ワインはお酒です。まずは好きかどうか、美味しいかどうか、シンプルに捉えればよいのです。
私が勉強している、ボルドー第2大学醸造学部のDUADでは、ワインの官能評価適正認定基準の講座を受講しています。DUADでは、ワインが何故そのような香り、味になるのか科学的に学びます。そして、講義内容に関連した試飲が毎回セットで行われ、総合的な評価が出来るように訓練されます。
そのDUADで大きく分けて二種類のワインテイスターが存在すると学びました。
個人の感想を除いて事実を判断するように訓練されたテイスターと、自分が好きかどうか楽しむことを目的としたテイスターの二種類です。
私たちDUAD生も、授業中やプロの試飲会の場では公平に全てのワインを試飲しコメントを残しますが、それ以外は楽しむことを目的にワインを嗜んでおります。
さて、ワインを試飲するにあたって、ある三つの情報元があるのはご存知でしょうか?
それは、視覚からの情報、嗅覚の情報、舌の情報です。
視覚からの情報
視覚からの情報はワインを判断するときに、一番初めに得られる情報です。
またこの情報が今後の香りと味の情報の手助けになる場合も多くあるのです。
白ワインにおいては、透明感があり、透き通っているか、レモンのような明るい黄色を帯びているか、という点が重要になります。
赤ワインでいいますと、すみれ色からルビーレッドのよう鮮やかな赤色を帯びていれば、そのワインは若い(製造された年からまだ数年しか経っていない)と大体推測することができます。
また少し沈殿物があるかどうか、濁っているかどうかでも、現在のワイン状態、造る時の様子や保存状態もある程度予想がつくのも視覚から情報です。
嗅覚と舌の情報
香りの情報源で「香り分子」というものがあり、それは良く見かけるグラスを回し、鼻から嗅ぐことで感じることができます。
香り分子は鼻から直接嗅いだ時と、口からワインを含み、鼻から息を出した時の二つのルートを通ります。そこで感知されるものを「香り」と私たちは呼んでいます。
鼻が詰まったことから味がよくわからないな、という経験は誰しもあったと思います。
それは香り分子が鼻づまりによってそれらのルートを通ることが出来ずに、私たちの脳が「香り」として認識できる情報量が少なくなるからです。
ちなみに私たちの鼻は非常に微量な香り物質でも感知することができますが、その反面20分程度でその香りに慣れてしまい、最初に嗅いだ時から度合いが変わってしまいます。
さて、味覚はどうなるかというと、鼻からの「香り」をシャットアウトした時に舌で感じられる要素、甘味、酸味、苦味、塩味、旨味といった「五味」になります。つまり鼻をつまんだまま何か口に含み、舌の上で感じられる要素が「味」なのです。
(風味と味の違いはここにあります。)
また、渋柿を食べたときのような舌や歯茎が縮むといった感覚、炭酸を飲んだ時の舌の感覚、ミントを食べたときのような涼しくなるフレッシュ感、牛乳を口に含んだ時のような濃厚さ、強いアルコールを嗅いだ時の「つん」とした感じ。これは「味」とはまた別のもので「刺激」に分類され、ワインの説明では大事な要素となります。
意識する
これらは私たちがテイスティングにおいて意識していることの一部に過ぎませんが、意識するだけで、普段から感じることのできる「味」や「香り」を更に見つめなおすきっかけになります。
もちろんこの話はワインだけに限りません。
朝起きてからすぐに飲む水やコーヒー、昼食やお菓子、夜に楽しみにしているお酒、どれを取っても当てはまる話です。
口にする物へ意識を向けてみませんか。
きっと今まで気付かなかった香りや、味の存在に驚かれることと思います。