【第68回】再会の晩秋
徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」
徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食の話など…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は人と合うタイミング、時間が生み出す関係性の中から感じ、思ったことなど。一朝一夕に関係性は築けないものですよね。自分自身も成長し、周りも成長し再会した頃、物事は良い方向へ進むのかもしれません。お腹が鳴ってしまいそうなチーズやフルーツを使ったパイと鶏料理、トスカーナ地方の白と合わせた話も。[月2回更新]
■人との繋がり、有り難い関係性
急激に寒くなってきましたね。晴れた日の日中、太陽が当たるところこそポカポカしているものの、家の中や日陰、風が通るところはなかなかの寒さ。今年は春夏秋とずっとこんな感じで、急に季節が次の季節に移り変わったような、そんな印象があります。みなさんのお住まいの場所ではどうだったでしょうか。人間には厳しいこの変化も、冬の野菜には必要なようです。ここにきて白菜の成長スピードがググッと上がってきました。
ここ最近の私のキーワードは「再会」です。
コロナ騒ぎがこれだけ落ち着いてきて、人の行き来がコロナ前と変わらないくらい自由になり、集まることも増えてきたのだから当然といえば当然です。が、どうもそれだけでは片付けられないくらい、もっと長い時を経てお会いする方が多いのです。例えば先週末は、私がNGOでボランティアをしていた頃、そこで私が書いた記事がきっかけで知り合いになり、彼女の結婚披露パーティのお料理を依頼され、その経験が後にレストランを開く時の大きな自信の1つにもなった、そんな関係性の知人が訪ねてきてくれました。
彼女は私が神山町に引っ越してすぐのタイミングで一度来てくれたのですが、その後はFacebookで繋がっているので近況は知れるものの、行き来はないままでした。このタイミングで、ライターである彼女は私と知り合うきっかけになった「半農半X」をテーマに取材をしていて、私と友人のことを思い出してはるばる来てくれたというわけです。私たち自身も数年前からようやく本格的に半農半Xな暮らしに舵を切ることができたから、神山町に移住してからの軌跡を見てもらえるいい機会になりました。
日頃私たちは、地元の方の仕事の速さを見ていることもあって、自分たちの活動の歩みが遅いということを大いに自覚しているのですが、それさえも彼女から見たら、この9年の間にものすごくたくさんのことをやったように見えるようで、その言葉には大いに励まされました。彼女自身も「もっとこんな風にしたい」という気持ちをちゃんと実現しないといけない、と自分に言い聞かせるかのように話して帰っていきました。
マヴィ在籍中にとてもお世話になった酒販店の方も、年に一度の旅行をどこにしようかと思っていた、と言いながら神山町に訪ねてきてくださいました。当時からとても豪快で、やりたいことはなんでもやるような、本当に人生を満喫しきっておられる方でしたが、その一方で仕事への情熱や力の入れ方も想像もできないくらい、人の何倍も熱心な方でした。また改めて彼の生き方や仕事に対する哲学を聞き、自分のゆるさ、至らなさをひしひしと感じ、体の奥の方で埋もれていたスイッチが改めてオンに入ったような、そんな気持ちになりました。
同じ神山町に住みながらも、移住してきた当初はよく交流があったけれど、それぞれ毎日の暮らしを作り上げていくのに精一杯で、ばったり会えば話もするのだけれど、日常ではなかなかゆっくり話す機会もなくなっていた…そんな人たちと料理教室を通じて、また再び関係性が繋がったパターンもあります。これもとても興味深いなと思っていて、一周まわってまた改めてスタートし直したような、結び直しというか、出会い直しのような感覚です。お互い10年近くを神山町で過ごし、それぞれの進むと決めた道を駆け抜けてきたからこその今、それぞれが進めてきた時を分かち合うような、素敵な時間を過ごさせてもらっています。
■チーズを使った料理と相性抜群、スパレットビアンコ
そんな懐かしい人たちと会う時に、美味しいワインは欠かせないアイテムの1つですね。(どんな時も美味しいワインが邪魔になることはないけれど!)
今回はイタリアはトスカーナの白、ラベルが印象的でちょっとジャケ買いしてしまいそうなスパレットビアンコを用意しました。この秋、組み合わせが気に入りすぎて、何度作ったかわからない柿(柿の前はシャインマスカットで)とモッツァレラとクリームチーズとすだちの薄切りをオリーブオイル、すだち果汁、少量の塩とブラックペッパーで和えた一品。切って和えるだけなのでスーパーシンプルなんですが、なんとも美味しくて白ワインにぴったり!
とはいえ、このスパレットビアンコはそれなりにボリュームもあるので、鶏肉とオリーブを煮込んだメインやパイ生地にかぶを薄切りにして載せ、その上にブルーチーズを適当に散らしてオーブンで焼き、ほんの少しのはちみつを垂らして食べる前菜、そして里芋のグラタンとも好相性でした。
そのまま飲んでよし、少しボリュームを感じるクリーミーなチーズや白いお肉とマリアージュさせると会話もさらに弾むこと間違いなし。お手軽なのにとても活躍してくれる優秀ワインです。
(2022.11.16)