【第22回】「モノポリー」
徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」
徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。年明け2021年の一回目はこんな時だからこそきちんと考えたい、私たちが慣れ親しんだ経済のしくみと大人の甘口ポルトタウニーのご紹介です。[月2回更新]
■2021年第一回目は雪景色の神山町の風景から
荒れ模様の天気が予想された2021年の元旦は思ったよりも寒さも風も抑えめでしたが今日(1月7日)になって数年ぶりにまとまった雪が降りました。
新年のご挨拶には少々遅くなりましたが本年もよろしくお願いします。
都市圏では医療体制が大変なことになっていますがみなさまどうぞお体を大切にお過ごしください。
このお正月は読書三昧で過ごしました。新年早々の小さな集いも「2020年に読んでよかった本を紹介する」というテーマ。私の一押しは平凡社STANDARD BOOKSシリーズ『岡 潔 数学を志す人に』です。このSTANDARD BOOKSシリーズは自然科学者が書いた随筆であるというのが特徴で、他の著者のものもとても興味深いのでお勧めのシリーズです。
■姪とのボードゲーム中に再発見
年末大晦日は姪の誕生日。姪のことを考えると繰り返し思い出してしまう、私にとってとても大切なエピソードがあります。それは今からもう8年以上も前の2012年。彼女はこの間19歳になったので、11歳の頃の話になります。実家に弟家族が遊びに来ていて、ゲームでもしようかということになり、長らく蓋を開けることもなくなっていたモノポリーを始めました。姪と甥と弟、私の4人だったと思います。
モノポリーはご存知の方も多いと思いますが、ボードゲームでサイコロを転がして進んでいくところは双六のようなものですが、資金を持ってスタートし、止まる先々で土地や水道、鉄道などの権利を購入していきます。購入した土地に他の人が止まると通行料を取ることができ、同じグループの土地を買い占めることができたら通行料が高くなり、その土地に不動産を建てる権利が出て、不動産が建つとさらに通行料が高くなる仕組みです。
その名の通りmonopoly(独占)が進めば進むほどゲームには有利になり、持たざる人は破産して負けるというゲーム。手持ちのお金がなくなると、家や土地を抵当に入れてお金を借りるなどかなり現実に即しています。買った当時(確か大学生の頃…)は何も考えずに遊んでいたけれど、私が改めていうまでもなく、資本主義がギュッと凝縮されたゲームです。
その日のゲームは姪が絶好調で次々と新しい土地の権利を手に入れ、不動産を建て、マイナスになるようなマスに止まることもほとんどなく、彼女の独り勝ちはもう目に見えていました。でも彼女はせっかくの楽しいゲームが終わってしまうことが嫌な一心で、こんなことを始めたのです。
「もうそこの通行料まけておくわ」「お金いっぱいあるからみんなに分ける」「この家をそっちの土地に建てよう」etcと、自分の持っているものを次々とシェアし始めたのです。
■独占ゲームの行きつく果て
彼女はただゲームを終わらせたくなかっただけなのだけど、そんな彼女の行為に私は目が覚めるような思いでした。現実の世界もまったく同じじゃないかと。誰かが独占してしまえばゲームは終わり。
でももし、その富を分かち合うことができれば、ゲームはずっと続いていくのです。この世界も貧富の差がどんどん大きくなっているということは独占が進んでいるということ。やがてそれは世界のThe endへと向かっているということです。特にこの新型コロナウイルスの蔓延が長引いていることから、かつては持てる者の側だった人、不安がなかった人の中にも苦境に立たされている人が出てきています。私たち個々人ができること、企業や自治体、そして政治ができることがもっともっとあるだろうと思っています。
この状態に目を伏せず、現実を直視して、分かち合うという人間らしさと心の余裕が取り戻された世の中にしていきたいと強く思います。そんな訳で年末はいつも、姪とこの出来事を思い出し世の中の状況に目を向ける良いタイミングになっています。2020年というこれまでになかった大変な年に大学生になった彼女はきっと辛い思いもしていることでしょうが、この状況をどう乗り越えていくか、彼女の未来を心から応援しています。
■ゆっくりと考えながら飲みたい、甘口ポルトタウニー
寒い冬の夜、特に年の始まりのこの時期は冒頭に紹介した私のように、日頃手に取らない本を読んでみたり、まとまった時間を使って観たかった映画を観たり、あるいは向こう1年に想いを馳せて計画を立てたりと静かに自分の時間を楽しみたい方も多いのではないでしょうか。
そんな時のお供にお勧めなのがポルトです。ポルトは酒精強化された甘いお酒。摘んだぶどうを潰し(今でも足で踏む場合も!)、発酵タンクに入れて発酵が始まると普通の赤ワインのように最後まで発酵させず、途中でアルコール濃度の高いブランデーを追加し、発酵をストップさせることでぶどうの甘さを残して仕上げています。アルコール度数も20度と高めなので、小さめのグラスに入れて少しずつ飲むのに適しています。
開栓してからも長くもつので急いで飲みきる必要もないため、常備しておくと、ちょっとゆったりとした時間を過ごしたいなあと思う時にいつでもグラスに注げるのが魅力です。
オニヴァでもこのポルトの大ファンの人がいて、ボトルをキープして仕事帰りに軽く1〜2杯飲んで家路につくのが定番になっていました。仕事のあと、家にストレートに帰らずにサードプレイスへ。そこで飲むのはコーヒーでもなく、ビールやグラスワインでもなく、大好きなキープしているポルト。とてもいい時間の過ごし方をされているなあと思っていました。
ポルトだけを食事のあとデザートがわりに飲むのも良いし、ちょっとしょっぱいチーズやナッツをおつまみに手元に置いておくと甘さとしょっぱさの無限ループに入ります(笑)。
フライパンにスモークチップを入れて火にかけ、網を渡して蓋をしてその煙でチーズやナッツを燻してスモークするのもお勧めです。もしくはナッツをローストして軽くオイルをまぶし、スパイスや山椒を絡めてひと味違うナッツも楽しい。そしてチョコレートとの相性も抜群なので、頑張った日や週末のご褒美に好きなチョコレートやブラウニー、ガトーオショコラと味わうのも素敵な飲み方。寒い夜に暖かくしてお気に入りの音楽をかけてポルトを注いで。暮らしの小さな喜びが増えること間違いなしの1本です。
(2021.01.13)