【第28回】DIYでキッチンを改修
徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」
徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は時間をかけて自らキッチンをリフォームした体験談とブルゴーニュワインの話。鹿肉とのマリアージュも![月2回更新]
■自らの手でマイスペース作り
春の嵐が去った後も、美しく優美な桜の姿はまだ私たちの目を楽しませてくれています。蕗が育ち、柿の新芽も出てきて、水の中には無数のオタマジャクシが。姿を消していた虫たちもどこからともなく現れ、鶏たちも虫を探して畑をウロウロするのが本当に楽しそう。パンの発酵速度も速くなったし、もう絶対的に春なんだと感じます。
この冬、私がチャレンジしたことの1つがキッチンの改修でした。シンクやガスコンロの周りが全部タイル貼りだったのですが、古い家なのでそのタイルが浮いてきて、一部剥がれ落ちている部分もあり、気になりながらも目をつぶっていました。でも家にいる時間が長くなり、友達の中にDIYが得意だったり、DIYの域を超えるくらい道具も揃っている人がおり、年々自分自身もDIYに興味が出てきたことから一念発起してやってみることにしたのです。
ミッションとしては、
- 全体の構想を考える(これに結構な時間をかけてしまいました…)
- 壁に貼られているタイルを全部剥がす
- 下から一定の高さまで新しくタイルを貼る
- そこから上は木の板を貼る
- 換気扇を新調する
- 棚を取り付ける
- 照明を変える
という感じでした。
1月の時点では全体的に木を貼るつもりでいたのですが、木を発注する直前に相談していた、DIYにしてはマニアックすぎる友達から「火の周りは法律上も燃える素材は使っちゃダメだから、木はまずいよ」と忠告をもらい、急遽どうしよう??となり、一から考え直すことになりました。
■理想を現実化する作業に四苦八苦
選択肢としては、キッチンパネル、ステンレスの板、石膏ボード、タイルあたりが考えられました。手軽にできるのはキッチンパネル、石膏ボードはリーズナブル、ステンレスは手入れがしやすい。それぞれにメリットがあり、「タイルは大変だからやめた方がいい」というアドバイスもあったのに、できあがりのイメージを思い浮かべてタイルを選んでしまいました。
タイルは1枚1枚まっすぐに貼らないといけない、絶対サイズが合わない場所が出てくるので、それはカットしなくてはならない(これが何と言っても一番大変!)、貼ったら終わりじゃなくて、その後目地埋めがある、などやってみて大変さがわかりましたが、最初は2枚貼った時点で「なんでタイルにしちゃったんだろう、、、」と泣きそうになったほどです。少しずつコツを掴んで慣れていき、見る人が見たら問題多数ですが何とか無事貼り終えることができました。
次は杉の板を貼ります。もちろん神山の地元の杉を使いました。こちらの難点は、コンクリートが下地だったので、振動ドリルという機関銃のような超重いドリルで穴を開けて、下地を固定せねばならなかったこと。音もすごいし、細かいコンクリートが舞い散るしで大変でしたが終わってみれば良い思い出。
途中何日もシンクとガスコンロが外された工事現場そのもののキッチンで、洗面所で洗い物して、カセットコンロで調理するというすごい日々もありました。最低限のものしか作れないし、その時は外食も増えざるを得なくて、気持ちが荒んでいたなあと思います。ちゃんと作って食べることって、私にとっては心身ともにとても大切なことだったと改めて気づく機会でもありました。
換気扇や照明のための配線、水栓の設置、長い板を縦にカットするといった部分はプロの方にお手伝いいただき、たくさんの人にたくさんの道具をお借りして、なんとか形になりました。後もう少し仕上げの作業が残っていますが、ようやく形になり、ホッとすると同時に達成感も味わっています。
そしてもう1つ、以前「破壊と消費はセット」というようなことを聞いたことがありましたが、今回のリフォームではそれを実感しました。
今回は必要に迫られての部分もあったのですが、こんなにまとめていろいろ購入したのは久しぶりだったなあと。
■ブルゴーニュと鹿肉、スマガツオ!
その集大成という訳ではありませんが、隣人の新しい門出を祝う意味もあり、ワインで乾杯しようということになりました。
今回は久しぶりのブルゴーニュ ルージュ。大好きなペルチエさんのワインです。ワインのことを話し始めたら熱くなるのはどの生産者さんもそうなのですが、彼は本当に熱狂的と言ってもいいほど。
垂直試飲と並行試飲をさせてもらったことがあり、終了後レストランに場所を移しても夜中までずっと語り続けてくれたあの日のことは今でもよく覚えています。そんなアルノーは若かりし頃電気も水道もないような場所で暮らしていたことのある強者。
フランス人やヨーロッパ人はDIYが得意な人がとても多い印象ですが、アルノーはきっと筋金入りなんだろうなあと思います。
「今日はブルゴーニュだよ」と話していたら「鹿のモモ肉いただいたよ」との返事が。タイムリーすぎて驚きましたが、衣にチーズを混ぜたカツにして、今が旬の新たまねぎをゆっくりじっくりローストしたものとともに。素晴らしいマリアージュでした。
前菜には徳島に来てからお目にかかるようになったスマガツオというお魚をタルタルに。
新たまねぎとピクルスを細かいみじん切りにし、3枚におろして皮を引き、細かく刻んだスマガツオとともに、塩、オリーブオイル、卵黄、マスタード、生姜とニンニク、コチジャン少々を加えて混ぜ合わせました。
こちらはややワインが強めには感じましたが、少しバルサミコを加えればよい感じでまとまります。
もちろん鹿肉はそう簡単には手に入らないので、牛肉や鶏肉で、(チキンの場合はチーズを多めにしましょう)、またスマガツオはカツオやマグロでも代用できます。
(2021.04.07)